裁かれるは善人のみの作品情報・感想・評価・動画配信

「裁かれるは善人のみ」に投稿された感想・評価

『父、帰る』や『ラブレス』のアンドレイ・ズビャギンツェフ監督作品。

この監督の映画には、基本的に利己的な人間しか登場しない。というより、出てくるのは他者に気を遣うほどの余裕がない環境に置かれた人間ばかり。
本作の主人公であるコーリャも尋常ではないくらいの短気で、子どもに暴力を振るったり、自分の家を買収した市長に対して散弾銃を持ち出そうとしたりとお手本のような父親像だ。
ちなみに、市長は法律無視でコーリャの家を自分の物にするなど腐敗しきっていて、部屋にプーチンの肖像画が飾ってあるのもロシアという国の民主主義が崩壊していることを如実に表している。

家も友人もパートナーも失ったコーリャができるのはウォッカを水のように飲むことだけだが、不幸の連鎖はまだ始まったばかり。
自分一人の力ではどうにもできないのが権力による暴力。蹂躙されるだけされ尽くして、最後は自己責任を被せられて断罪される。コーリャの罪は、この国に生まれてきたことと生き続けたこと。権力者や大衆にとって都合の良いものが真実で、権力に身を委ねることが善行。国民に主権がない国では人によって命の価値に差があるのである。

いつだって、犯罪を作り出すのは社会そのもの。責任を個人に押し付けて終われば、また同じような事件が繰り返されるだけの抜けられないトンネルの中に誰もが閉じ込められることになる。
被害者を生まないためには加害者を生まないことだ。

主人公をどん底まで突き落とすことで、逆説的に宗教と権力が結び付けば人を人と思わない社会を作り上げることができてしまうことと、民主主義が機能していない国では国民生活が蔑ろにされることがよく分かる映画……。

「男と同じね きれいと褒めて次は殺す」
流石にこれは辛すぎるって。鯨?の骨がある海のシーン美しくて悔しかった。"分からない、何一つ分からない"
hirokinsky

hirokinskyの感想・評価

3.6
真昼間からウオッカをラッパ飲みする映画

市長も警察もヤクザ。

こんな街、こんな国はイヤだ。
DW

DWの感想・評価

4.0
『父、帰る』『ラブレス』、そして今作『裁かれるは善人のみ』。この監督には名作しかないのでしょうか。ロシアはタルコフスキー、ソクーロフなどの怪物を産み出しましたが、アンドレイ・ズビャギンツェフもそんな怪物の一人だと思います。
旅男

旅男の感想・評価

3.8
タイトルと予告からお察しの通り絶望を丹念に磨き上げて作られた映画
町を囲む自然や解体シーンの構図の美しさが一層苦しさを引き立てる
ないと分かりつつ最後の一撃を期待する自分の甘さまで含めて救いはない
…神は一緒に苦しんでおられるのですか?
かこ

かこの感想・評価

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ラブレスの方が、ドラマにまとまりがあって好き。
不倫のくだりが、善人が悪人に淘汰されていく基本軸から逸れてる気がしてしまった。
不倫が理由で悪人に勝てないのはなぁ。
"裁判を抱えながら人間関係を大切にする困難さ"の結果っていう風にも別に見えず、完全に別軸の問題に見えたから余計に自滅感感じた。
それが人生の生々しさだっていうことならそれはそれでいいんだけど、それにしては込められてるメッセージが一面的だからなぁ。
ラブレスはそのあたり一貫しててよかった。良い意味での余白のなさ。

脚本のの省略の仕方とか、演出全般は、丁寧で好き。不倫見つかるとこ、描き方良い。
宗教周りのシーンも全般好きだった。
題名に惹かれて観たのですが、これまた覚えてなくて、みなさんのレビューを拝読。
重厚な作品ですね。観ないといけない。
今のロシアでは上映されないでしょう。
独裁者に都合の悪いものは全て抹殺される。
悪人が栄え善人が滅ぶ。
ロシア語には安全を表す単語が存在しないらしい。車の修理工場を営む男の元に、娯楽施設を建設するために土地を明け渡せとの通達が市から入り、拒否する彼と友人の弁護士に足して不正裁判をしたり銃で脅したり市長があの手この手で妨害を繰り広げる。弁護士と男の妻の不倫がばれ、妻は失踪しやがて死体として発見される。殺人の容疑にかけられた男は敗訴し刑務所に幽閉、家は破壊されてしまうという救いようもない話。劇中のキリスト教の描写とリンクしてる感じが綺麗だね。
一人旅

一人旅の感想・評価

5.0
アンドレイ・ズビャギンツェフ監督作。

土地の買収を巡る所有者の男と強欲な市長の対立を描いたドラマ。

『父、帰る』(2003)のアンドレイ・ズビャギンツェフ監督による重厚な人間ドラマの秀作で、ロシア北部の地方都市を舞台に、自動車修理工場を営む主人公:コーリャが、自身の土地を買収しようと企むヴァディム市長の陰謀に巻き込まれ身を滅ぼしていく姿を静謐なタッチで見つめています。

旧約聖書の中のヨブ記をモチーフにした作劇で、主人公コーリャは現代のヨブを象徴する人物です。ヨブ記は、サタンにそそのかされた神が信心深いヨブという男に対してあらゆる苦難を与えるが、それでも屈しなかったヨブは神によって祝福されるというお話。本作の主人公コーリャはヨブとは異なり信仰心は皆無ですが、彼の土地を強引に買収して通信施設を建設しようとするヴァディム市長から脅迫や嫌がらせといった行為を受け続け、それはやがて家族の愛情を引き裂く別の悲劇へと直結していくのです。ヨブ記ではヨブは最後に祝福を受けますが、本作のコーリャはそのまま不条理で悲劇性に満ちた末路を辿っていきます。両者の違いは神への信仰心の有無にありますが、本作では欲深い市長とロシア正教司祭の親密ぶりが映し出されています。政治的権力と宗教的権力が精神面で結託して、コーリャという一人のしがない善人を虫けらのように追い払うのです。

現代社会における個人と国家の関係性を浮き彫りにしており、国家(公権力)によって個人が容易く圧殺されてしまう恐怖を提示しています。巨大な権力を前に人は余りにも非力な存在なのです。

全編を貫くロシアの寒々しく荒涼とした大地の風景が圧巻で、コーリャの直面する苦難と同調していますし、要所要所で流れる重厚なバックミュージックも映像に良く溶け込んでいます。
権力を盾に不当な土地買収を計画する市長に対し立ち向かった市民の結末を描いたロシア映画。

2022年97本目。

『ラブレス』のアンドレイ・ズビャギンツェフ監督作品です。『ラブレス』ほどの不快な胸糞感は無かったものの、やはり救いのない重苦しい作品でした。

友達の弁護士と共に正統な方法で土地の所有権を訴えるコーリャに対して職権濫用で横暴な手段を採る市長。力のない正義は無力であることをまざまざと見せつける現実主義的な無慈悲な展開は良くも悪くもヨーロッパ的だなと思いました。一市民の無力さが広大なロシアの土地の中でより浮き彫りになる演出も皮肉染みていて印象的でした。

かなり重苦しく骨太な人間ドラマでした。
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