この映画を理解しないことにはアメリカは語れない、と言ってしまっても良いのではないか。私にとっては初のクリント・イーストウッド作品だったのだけれど、派手な劇伴を使わずにしかしタイトな演出で、渋く手堅くこちらを引きずっていくその語り口にはやられる。横綱相撲を観ているかのような体験だった。逆に考えればそれだけデーハーなエンターテイメント性は禁欲されているとも言える地味な映画なので、ドンパチを期待して観るとアテが外れるかもしれない。主人公が撃つ銃のように、狙いに狙った一発をここぞというところで当てる作品だ。今の私にはこの映画を云々する資格はないように思うのだが、アメリカのタカ派的な部分や強硬派としてのイーストウッドに触れ、これこそ保守主義の本懐なのではないかと唸らされた。幼稚なことしか書けていないのが自分でももどかしいのだけれど……敬遠していた他の作品を次々と観て行きたい。