KouheiNakamura

アイアムアヒーローのKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

アイアムアヒーロー(2015年製作の映画)
4.5
遂に来た!日本製ゾンビ映画の最高傑作!
花沢健吾さんの同名漫画は全巻持っていますが、最近は話のスケールが大きくなりすぎていて少しゲンナリしていまして…。今回の映画版はシンプルなストーリーでとても良かったです。
うだつの上がらない漫画家志望のアシスタント、鈴木英雄35歳。仕事も恋人との関係も、何もかもが上手くいかない彼の日常はある日突然一変する…。

前半の、じわりじわりと世界が終わっていく様を描く場面の数々は心底ゾクッとします。日常の中にふっと紛れこむ非日常。違和感の見せ方が上手いです。あれ、マスクしてる人多いな…とか飛行機飛びすぎ…とかベンチに座る男の様子がおかしい…などなど、あの手この手でおかしくなっていく日常を描いていきます。映画の最初、ニュース映像から始まるのもgood。
そして、英雄の彼女に起こる異変からの浜松市ロケシーンは素晴らしいの一語。ノンストップで描かれる、まさしく地獄絵図。そこから高速道路での息詰まるシークエンスまでは正に完璧。
その後映画は少しトーンダウンしてしまいますが、それも全ては後半部のショッピングモール大殺戮のための布石。中盤を退屈と言う人もいるみたいですが、僕はむしろあの森での場面で英雄のキャラクターがより掘り下げられていて良かったです。

さあ、そしてついに訪れるショッピングモール(ゾンビ映画の大定番!)での一大地獄絵巻はもう最高です!製作者の方々が「映画らしい映画を作りたい」という思いでテレビ局とのタイアップを一切排除したおかげで、本気のグロ描写をこれでもかと見せつけられます。血しぶき、部位欠損、痛い場面のオンパレード。もちろんただグロくしたわけではなく、そこには物語上の必然性がしっかりあります。地獄を切り抜け、痛みに耐えてこそ人はヒーローになれるのですから。

また、芸達者揃いの役者さんたちも見所の一つ。この人以外に鈴木英雄をやれる人はちょっと考えられないぐらいのはまりぶりを見せた大泉洋さん、凛とした強さが印象的な長澤まさみさん、チャラい奴をやらせたら右に出るもののいない岡田義徳さん。そして個人的に今回一番目を惹かれたのは、井浦役の吉沢悠さん。抑揚のない喋り方で、心底恐ろしい悪役を怪演されていました。

まだまだ語りたいことは沢山ありますが、あと一つだけ。この映画の何が一番凄いかって、ちゃんと怖いことなんですよね。ゾンビだけではない、人間の怖さを心底感じさせてくれます。
今劇場で観るべき映画の一つ、オススメします。
KouheiNakamura

KouheiNakamura