これもまた評価に苦しむ……取り敢えず書けることといえば安藤サクラ氏の熱演が凄いこと、程度しかないのだった。徹底的にダメな人間（「百円」の女）が、ボクシングという手段を得てなんとか這い上がろうとする……と書けば『ロッキー』なのではないかという印象を受ける方も居られるかもしれない。ある意味ではあの映画に似ている。だが、本作はむしろ安藤氏と彼女に群がるダメ人間たちの姿をこれでもかと言うほど生々しく描いていて、「そうだよな、現実ってそんな甘っちょろいものじゃないよな……」という感慨を抱いてしまうのだった。ベタ甘なラヴ・ストーリーにもせず、単純なサクセス・ストーリーにもせず。そこが評価の割れ目ではないか。私はやはり安藤氏が「百円」の女ではなくなったのだと信じたい。
