勝ったのは農民だ

百円の恋の勝ったのは農民だのネタバレレビュー・内容・結末

百円の恋(2014年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

ストーリーは一言で表すなら、「女性版ロッキー」です。
ストーリーのプロット自体は本当に単純な話なんですけど、なんと言っても安藤サクラさんの役作りと日常生活の細かいリアルな描写でだいぶ映画としての格を上げている感じです。
ボクシング関係なく、自分の好きな"人生劇場"の映画ですね。

でも、100円ショップでアルバイト経験のある自分として、あんな店は絶対にありえません。つまり、作中では(社会のゴミ溜め・吹き溜まり)の象徴としてあの店が描かれていますが、そこは全国の100円ショップで働く人達は怒っていいレベルです。
店長や本部社員(エリア店長)が疲弊しているってのは全国的にもよくあると思いますし、後から来たエリア店長だって仕事でしている訳ですからね。ちょっと彼に対して愛がないというか、可哀想です。

根岸季衣さんも、個人的には味のある好きな女優さんだと思いますし、今作でもイカれた中年女性を楽しく演じていたと思うんです。ただ、どう考えても彼女が晴れ晴れと、颯爽と去って行くみたいな、なんならいい人だったって演出は首を傾げます。

終盤で、主人公の父親が居酒屋で、
「まぁ若いうちは何でも好きなこと挑戦すればいい」
「もう若くないけどね」
「いや、そうじゃなくて、父さんみたいに歳食ってから自信を持てないってのは惨めだから。お前がそうなんなくてよかった」
って言うセリフがあるんですが、自分の大好きな北野武監督作品『キッズリターン』を思い出したんです。そういうセリフが出てくるだけで自分はもうダメです。

ジムの会長は「試合には金もかかるんだから、自己満足でやられちゃかなわない」みたいなことを言ってますけど、実際のほとんどのボクサーはボクシング以外で手に職をつけたりバイトしながら自己満足の延長でやってると思うんです。引退後の生活の方が人生長いことくらいみんな知ってるはずです。

青木ボクシングジム、あれは東京に実際にあるジムですよね。実際の撮影のために、場所の提供やトレーナー指導もかなり協力したと思うんです。たしか、女子でボクシング世界王者も輩出したほどのジムのはずです。今作の練習シーンの映像はすごくリアリティがありました。主人公の背景にいる選手とかも多分、役者さんじゃない本物のボクサーです。

日本映画では『あぁ、荒野』とか、女子ボクシングだと『ミリオンダラーベイビー』なんかを観てないから、あんまり比較出来ませんが、現時点ではベスト3には入る、大好きなボクシング映画になりました。

ボクシング練習の描写に関しては『キッズ・リターン』を超えてると思います。