あなぐらむ

徳川女系図のあなぐらむのレビュー・感想・評価

徳川女系図(1968年製作の映画)
3.7
大奥に男は僕一人!子種欲しさにどの子もこの子も誘惑してくる!
…的なSODのエロDVDみたいな世界なのだが、どっこい異常性欲路線前夜の本作で描かれるのは、どこか強烈な女性不信に囚われた徳川綱吉(吉田輝雄が好演)の、無償の愛を探す様。三原葉子・三島ゆり子をツートップに、内田高子、一星ケミ、火鳥こずえに辰巳典子ほか、当時のピンク映画女優を観られる貴重な作品でもある。

石井輝男は東映京都というアウェー戦を、脚本に新東宝の盟友・内田弘三を招いて堂々と見世物小屋的趣向で飾り立て、それでいて身分制を逆照射してトップである将軍の、既に権力だけの存在であることの孤独を渇いたタッチで描き出す。裸映画であろうと石井の見据える場所はその先にある。

不良メイクでない賀川雪絵が新鮮、谷ナオミの姿も。小池朝雄、南原宏治が脇を固める。影は「十一人の侍」「仁義なき戦い」シリーズの剛腕・吉田貞次。