Hiiiraiii

やさしい人のHiiiraiiiのレビュー・感想・評価

やさしい人(2013年製作の映画)
3.7
2014.11.9 ユーロスペース

昨年の秀作『女っ気なし』のギョーム・ブラック監督の長篇第一作。

冴えない不器用な男の可愛らしさを描いた人間ドラマ『女っ気なし』は猛烈に支持した。フランス映画ならではの知性溢れる会話劇と日常の空気漂う作風になんとも心地良い気分になった。中篇であり60分間に凝縮されたからこその味わいという部分もあったが本作『やさしい人』は初長篇作の110分であるがやはりこの監督の人間ドラマは味わい深い。

パリでインディーズとして少しばかり名を馳せたマクシムは父親の住む実家に戻ってくる。行き先不透明の未来を不安に感じながら。そんな彼の元に地元の新聞記者でありマクシムより一回りも歳の離れたメロディが取材に来る。そして訪れるロマンス。しかし素晴らしき日が長くは続かず二人の間には大きな溝が出来る。さてその溝をマクシムはどう悩み行動し発言するのか。その彼が一つ一つ動くその運動に我々観客は様々な思いを馳せる。青年から中年に、そして恋だけではない生活に、生活の一部である親に。恋愛映画要素を走る映画のその道筋にはキチンとマクシムの人生が並走する。人は恋愛だけでは生きていけない様に周りの生活も描き出す。そういった深く味わい深い映画を今回もギョーム・ブラックは描いたのだ。

情けなくなるような男しか出てこない映画だ。強くもなくハッキリもしない。でもそんなちんけな男が様々な感情を背負いながら好きな女の子に不器用だけどぶつかっていく。そんな映画は沢山あるかもしれないけど、彼を理解し共感出来うる彼の周囲の事柄が丁寧にそして自然に描かれているからやっぱり素晴らしい。そういった、さりげない、部分を描くのって難しい。だからこそその部分が垣間見えたとき感動という感情が生まれるのだと思う。
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