2015年公開映画
原作はイギリスのSM官能小説
なんと「トワイライト」の二次創作としてイギリスの主婦がエドワードとベラを主人公として書いたSM小説。
最初「トワイライト」ファンが集うトワイライト・オンライン二次創作垢に投稿された作品だった。
噂が噂を呼び出版業界が動き出す程の話題を呼んだ。
2011年に書籍化されランダムハウスが版権を買い取り
2015年6月現在、世界で1億25000万部の売上を上げ現在も売れ続けている。
内容がティーン・エイジャー向けでは無い事や、二次創作なので原作キャラの名前が使われてた事などが物議を呼んだが
1作品として独立後
主人公の名前をクリスチャンとアナに替えて、大幅に過筆され、その後映画化された。
この「フィフティ・シェイズグレイ」が第1作目で後に「フィッティ・シェイズダーカー」「フィフティ・シェイズフリード」の続編が続く。
「フィフティ・シェイズグレイ」とは50の顔を持ったグレイという意味がある
27歳の若さで新進気鋭の大富豪実業家
浮いた話もなく冷徹なビジネスマンとして業界に名を轟かせているグレイの元に
大学生のインタビュアーがやってくる。
田舎育ちで養父の元で育ちながらも、愛情を受けて成長した優しくて素直なアナ
「貴方は本当はとても優しい方なんじゃないかと思います」
とグレイに向かって言う。
グレイは彼女の「純粋で無垢」な心を見抜き興味を持つ
主人公のグレイは不幸な生い立ちが理由で裕福な家庭の両親に養子として迎えられた過去を持つ
彼は幼い頃実母から残酷な仕打ちをされて心に傷を持ったまま育つが
15歳の時、社交界に顔が広い養母の友人の婦人に誘われて初体験をする。
それはお金持ちの有閑マダムが美しい少年の童貞を奪う話ではなく
心に傷を持ったグレイを見抜き、その婦人はグレイの支配者となり服従者として調教を施す事でグレイの心の傷を補う。
元々、イビツな形のトラウマを持つグレイは男女間の恋愛をせず、気に入った相手と主従関係の契約を交わしSMプレイによって性的関係を持つ趣向の持ち主となる。
アナはグレイにとって神からの祝福の様な存在。
純粋無垢で素直
思いやりがあって頭も良い
そして何より大学4年生なのにキスもSEXもした事が無い処女だった。
SMの支配者としてこれ以上魅力的な獲物はいない。
今までの服従者はグレイの財産や社会的ステイタスに喜んで服従していたが、アナは契約書になかなかサインをしない。
誰も触れたことの無いグレイの心の奥底に切り込むように彼の中の「愛情」に触れようとする。
SMのルールにおいてサディストである支配者は服従者である奴隷の意に沿わない事は出来ない。
つまり周り回ってSの方がMに支配されていることになる。
Sの事をどれくらい焦らして上手く欲情を掻き立てて興奮させ、さらに満足させる事が出来るかがMの資質にかかっている。
アナは生まれながらにその才能を持っていた、彼女は素直にグレイを愛そうとしただけだが、グレイは自分の言いなりにならない純真なアナにどんどん惹かれて夢中になっていく。
この映画はSMの「基礎入門コース」みたいな映画
何でも手に入ると思っていた支配者が
運命のMに出会って翻弄され、社会的な地位も積み上げた知識と経験も
SMのルールさえ通用しなくなり丸裸のただの1人の男にされていく様が描かれている。
豪華なSMプレイルームや億万長者の生活が垣間見えるゴージャスでスタイリッシュな映像が華を添える
最初見た時
「SMを描いた衝撃的な作品」
「爆発的にヒットしたSM小説の映画化」と聞いていたが、映画を見たら「SM」を語る程の描写も無く、所々グレイの深刻さに失笑しそうになり
ヒロインのアナの無垢な天然さに突っ込みを入れたくなる物語に
これのどこが爆発的にヒットしたのか分からない…と思ったが
なるほど「トワイライト」のエドワードとベラが下地にあり
「トワイライト」ファンの間で噂が噂を呼びヒットしたのだと思えば、ドラマテイックな深刻さやアナの純真さ
そしてヒットした理由も納得がいく。
2015年「ゴールデンラズベリー賞」を獲得しているあたり、つまりそおいう作品なのだと思えば「そこまで酷くないよ？」と私は思ったが原作ファンやSMファンは不満だったのだろうか…。
普通の恋愛では満足しない男と、彼の性癖を理解して翻弄する女
いつの時代も一家庭の主婦の妄想が生み出した理想を描いた物語に勝る物は無い
かの歴史的名作
「風と共に去りぬ」も一家庭の主婦が理想の男性「レッド・バトラー」と彼を翻弄して夢中にさせる「スカーレット」を妄想から創作した小説
エドワードとベラにハマったオタク主婦が妄想に妄想を重ねて自分の理想を描いた世界
血を吸いたいが彼女を人間のままにしておきたいヴァンパイアと、彼のものになりたいけど彼のルールに従う事を嫌う処女の娘の恋愛劇を、SM版で仕上げた二次創作の傑作。
SMを描いた映画ではなく、
「トワイライト」のエドワードとベラが下地になっている二次創作作品、と思って見ると好評価を付けたくなるので「3.5」😊
