koya

雨の日は会えない、晴れた日は君を想うのkoyaのレビュー・感想・評価

4.0
邦題につられてはいけません。
原題は「崩壊」という意味の、中年男、ジェイク・ギレンホールが静かに精神的に壊れていく、まさに「崩壊」映画。

金融業で裕福な男が交通事故で妻を亡くす。
妻を亡くしても不思議と哀しくならない男、デイヴィッド。
逆に、破壊志向がジワジワと出てきて、精神的に壊れていく。
その過程を実によく追っているので、話は全然進まないのです。

妻の父のコネで、いい企業に入り、仕事をして、キレイな大きな家に住んで、美しい妻、裕福な暮らし・・・築き上げてきたものが、ジワジワと崩壊していく。

これは若い人向けの映画じゃないと思うんですね。
物語が動かないので、退屈、理解不能ととられても仕方ないかもしれない。
でも、私は有名人でも金持でもないけれど、年をとって自分なりに築き上げてきたものがあるわけです。
普通だったら、それを失う事は怖い、勇気のいる事だし、多少、嫌な事があっても、それには目をつぶって、そうやって生きていく。

それなのに、すぐには、出来上がらない、5年、10年、20年と時間をかけなければ築き上げる事ができないものを、デイヴィドは、妻の死をきっかけに壊してしまう。最初は冷蔵庫の解体だったのが、エスカレートしていく。妻という一つの「要素」がなくなっただけで崩壊してしまうほど、一見、成功者のデイヴィッドの人生や生活はもろいものだったのかもしれません。

観ている最中は、訳わからないジェイク・ギレンホールの壊れ方が怖いのだけれども、ラストまで観るとなぜかほっとする。
人間、特に男の子には、破壊衝動というものがあるそうで、壊す、という行為で昇華するものがあるんでしょうね。
一見、普通の裕福なホワイトカラーに見えて、少しずつ、狂気のように壊れていくジェイク・ギレンホールはさすがとしか言いようがないです。
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