再生のための破壊とグルーミング。
大切な人を失い、それでも前に進み続けるという形式の物語はよく見受けられるが、自らの喪失感にすら無自覚な人物を描いていたのは目新しいと感じた。
日々の生活のみならず妻や家族に対して無関心だった主人公のデイビスが、徐々にそれらの大切さに気づいていく過程や、至る所に散りばめられたメタファーの数々が本作をとてもユニークな作品としていた。
そしてデイビスを演じたジェイク・ギレンホールの演技力はいつも通り素晴らしく、非常に繊細な表情や人混みの中で踊り狂うシーンなど印象に残るシーンが多かった。
自らの日常生活に関する事柄を全て「当たり前」だと捉えてしまい、それらに無関心になってしまうことは誰しも思い当たるのではないだろうか。
本作は自らの現状に対して一旦立ち止まり、その有り難さや重要さを再認識することの大切さを教えてくれる作品だ。