マシュー・ヴォーン監督は定石をほんの少し外すのが上手い。
彼の演出は基本的に王道に忠実であるが、少し、ほんの少し変化球を投げ込むことで観客の予想を鮮やかに裏切る。
『キングスマン』においては中盤の教会におけるキレッキレのアクションがその変化球だといえる。
計算しつくされたアクションに映画であることを忘れさせてくれる至福の瞬間だが、その後の展開は観客を未知の世界へ誘ってくれる。
R-15ということで、腕も首も吹っ飛ぶのをばっちり見せてくれるが、そこはスタイリッシュな映像美に定評のある監督。今回も悪ノリ全開の人体損壊シーンを見せてくれる。
テーマはいたってシンプルで「人間は生まれの貧しさに関係なく大成できる可能性がある」という階級社会のイギリスならではの出発点だが、アメコミ原作の映画としてはここを主軸とするのはきわめて正しい。
キングスマン=スパイ=ヒーロー
であり誰しもがその可能性を開花するチャンスがある。話の大部分をコリン・ファースではなく主人公の成長にフォーカスしているのもそこを強調したいからであろう。
力強いメッセージはきっと多くの人の心に響くだろう。
…などと深いことを考えなくとも楽しめる。悪ノリ大好きな大人限定ですが…。