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窓ぎわのトットちゃんののんのレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.2
キミは、ホントはいい子なんだよ


日本でいちばん売れた本はハリーポッターでも村上春樹でもなく、『窓ぎわのトットちゃん』というのはちょっとした驚きだが、日本一のベストセラーの満を持してのアニメーション映画化である。

黒柳徹子の自伝的小説でもある本作は、おてんばで自分の気持ちにまっすぐなトットちゃんの成長物語である。

序盤のトットちゃんの落ち着きのなさは、いまでいえば間違いなくADHDの特性だと思う(黒柳徹子さん自身が発達障害であることを公表している)が、それを受け入れるトモエ学園の小林校長の優しさが光る。

後半はトットちゃんの成長に合わせ、少しずつ見える世界が広がっていくのも面白い。聖人君子のように見えていた小林先生や、トットちゃんの父親も実はそれなりに人間の弱さが垣間見える部分があり、トットちゃんはそれらを見て成長いていくさまが丁寧に描かれる。

パステルカラーの背景がとにかく美しいが、後半は直接描写を避けながらも、確実に日常に侵食していく戦争の影が子どもの目線を通して描かれていて、前半と後半で対比が強調されている。


ゴジラ、ゲゲゲと戦争や戦後を背景にした作品が続いている。興行的に跳ねるかはわからないが、本作も紛れもなく2023年を代表する一作だ。
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