のん

首ののんのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.2
どうせ死ぬけどな


『アウトレイジ 最終章』以来、6年ぶりとなる北野武監督の最新作『首』は、一風変わった時代劇として個人的には抜群に楽しめた。

主に信長、秀吉、そして明智光秀の視点で描かれる謀略が飛び交う展開は、さながら北野武がこれまで描いてきたヤクザ映画のよう。戦国版アウトレイジとも呼ぶべきか、これまでの常連ががっちりと脇を堅めている。

作風は静寂さの中に暴力性と、時折、過剰なまでの笑い、というかほとんどコントのような描写が混じり、かなり混沌としている。このあたり統一感がないと感じる人もいそうだが、『アウトレイジ 』然りシリアスな場面で何だか笑ってしまう、というこれまでの作品に通ずるものは多い。


なにより、主要キャラクター含めはちゃめちゃに人が死んでいく部分に「誰しも平等に、等しく命に意味がない」という徹底した冷徹さが貫かれていて、80歳も手前にした監督のパワーを感じた。

首のすげ替え、とは昔の人はよく言ったものだと思うが、それを端的に表現したラストシーンもとても好き。15億の予算を使ってこんな日本映画を撮れるのは後にも先にも北野武しかいないだろう。傑作。
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