終わらない戦争
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は奇しくも同時期に公開中の『ゴジラ−1.0』と似たテーマを描いている。ゴジラが戦争の亡霊の象徴なら、こちらはさながら戦後も形を変えて戦争が続いていることを示唆している。
私自身は鬼太郎の大ファン、というわけでもないが、本作は史実とフィクションを大胆に掛け合わせた怪奇ものとして非常に完成度が高いと感じた。
田舎特有の閉鎖的な空気は、いわば日本社会の縮図であり、そこで繰り広げられるドロッドロに煮詰まった醜悪なドラマは非常に気分が悪い。
そのままだととても観れたものではないが、本作はそこに昨今のトレンドをうまくまぶすことで極上のエンタメとして楽しめるようになっている。
RRRさながらのバディムービー、派手なバトル演出など「ウケる」要素を全部盛り込んでいるため、非常にヘビーなドラマが程よく中和されている。
とはいえ、原作者の水木しげる先生をモデルにしたキャラクターの戦争体験がところどころで挿入され、さらに登場人物の口からはっきりと戦後の経済成長は戦争の続きだと言わせている。
どう考えても子供向けの作品ではないが、扱うテーマに志の高さを感じたし、それに応えうる映像のクオリティだったと思う。口コミでの広がりも納得の傑作だ。