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ヘイトフル・エイトのSPNminacoのレビュー・感想・評価

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)
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駅馬車からバスや電車まで、乗り合わせた乗客は社会の縮図となる。そして、それぞれの立場背景による役割や因果関係があったりしつつ、各キャラクターが同じくらいの比重でゴールまで進む。雪の中同じ地平空間に閉じ込められた者たちは、『オリエント急行』や『そして誰もいなくなった』を思わせた。但し、タランティーノ映画なので当然殺し合い展開になるし、誰が生き残るか(或いは誰もが死ぬか)ってのがゴールでもあり…。
だが、大量のダイアローグが延々続き、火種を燻らせるばかりでなかなか火を吹かない。一様にルーティーンで繰り返される演技も、狭いようで広い部屋も概念として抽象化されたアメリカで、5幕の舞台劇を観るようだ。口上、照明、音楽、ステージの奈落、血糊、背景人物の動き、画面サイズも映画というより劇場空間。だからこそ、見世物小屋の如きスプラッターを経て、エピローグの静けさが妙に格調高い。「上手いこと考えたな」と言わしめるリンカーンの手紙に当たるスポットライトが、虚構の西部劇の幕を引く。
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