えいがうるふ

深夜食堂のえいがうるふのレビュー・感想・評価

深夜食堂(2015年製作の映画)
4.6
原作もドラマもチラ見のみで鑑賞。

自分が割と料理好きなせいか、マスターの作る料理はどれもまさしく、自分が食べたい料理というよりここぞという時に人に作って食べさせたくなる料理だなぁと思いながら観ていた。

卵焼きは意外と好みが分かれる。さすがに日本人なら恐らく誰もが小さい頃から食べているせいか、各々の家庭の味の原点なのだろう。
生まれも育ちも東京の私が焼く母譲りの卵焼きはかなり甘口。でも食べさせる相手によっては甘みをカットすることもあるし、逆にさらに甘くすることもある。そんなオーダーのシーンもあったが、きっとマスターの卵焼きも、甘みのさじ加減は客あしらいのうちだろう。

とにかく登場人物がみんなやさしくて大人なのが良かった。
松重さんのキャラはお約束すぎるし、多部未華子の訳あり影ありキャラの成長ぶりも良かったし(ただし雑すぎる包丁研ぎシーンだけは物申したい・・あれじゃ余計鈍らになっちまう)、余貴美子は男前だし、筒井道隆の痛々しさも良かった。高岡早紀演じるたまこですら、末路が分かっているからこそ、初なハジメちゃんの傷が深くならないうちにキッチリ振ってあげたのかも知れない。オダジョーに至っては最近クズ男の役ばかり観てたせいかあの甘いマスクで穏やかすぎるキャラと猫なで声がもはや不気味なほどで、絶対こいつには裏の顔があると思ってしまった笑
そして真打ち登場ってな体でやっとこさ現れた田中裕子の底力よ。うっへぇ・・となんか変な声が出るぐらい、役者として芝居が別格過ぎた。

でも結局、登場人物の誰よりもマスターに感情移入。
私はマスターみたいにお人好しでも優しくもないけれど、人に手料理を振る舞うのが好きなのだ。高級食材も使わないし凝ったものも作らないけれど、ありあわせで作った賄いもどきの手料理でしみじみと喜ばれた経験なら少なからずある。それはどれも、とても幸せな記憶なのだ。

いいなあ。もし私に遊んで暮らせるお金があったら、道楽でこんな店やりたい。定番メニューは豚汁と数種の酒だけで、あとはその日の食材とお客さん次第だなんて、めっちゃ面白そう。夢だ。