LalaーMukuーMerry

トラッシュ!-この街が輝く日まで-のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

4.2
僕の名はラファエル、リオデジャネイロのスラム街に住む14才。リオの町から出るゴミの巨大集積場でガラクタを拾い集めて、お金に換えて生きている。
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ある日、僕はゴミの山の中で高級な財布を見つけた。ラッキー! 仲間のガルドと財布のお金を分けた。ガルドは僕の親友だから、僕一人でうまい汁を吸うわけにはいかない。財布は捨てろとガルドは言ったが、僕は何か胸騒ぎを感じてそのまま持っていた。
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すると、すぐに大勢の警察がやってきて、「財布を探している。必ずこのゴミの山の中にある、とても大切なものだから見つけた者には1000レアルの賞金が出る」という。これは何かある、こんな財布にそんなお金を出すのはおかしい。現金の他に財布に入っていたのは、ジョゼ・アンジェロという男の写真付きIDカード、アニマルロト、少女の写真、それに何かの鍵だけだった。怪しいのはたぶんこの鍵だ。
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もう一人の仲間、ラットに知恵を借りることにした。ラットは下水道の中で寝泊まりしている変なやつだが、頭が切れるから頼りになる。「俺はこの鍵が何の鍵か知っている、教えてほしいなら俺も仲間に入れろ、お金は山分けだ」と言い出した。仕方ない、条件をのんで僕たちは、ラットについて下水道を通ってその場所に向かった。
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着いた所は鉄道の駅だった。駅にあるコインロッカーの鍵だという。だが警備員が大勢いるから近寄れない。僕たちのような薄汚れた少年がロッカーの前でうろついていたら間違いなく怪しまれる。こういう時、とっさにアイデアがひらめくのがガルドだ。彼は急に走り出して通行人の一人のおばさんのカバンをひったくろうとした。おばさんはびっくりして叫び声をあげた。たちまち構内は大騒ぎ、警備員たちは一斉にガルドを追いかけ始めた。ガルド、サンキュー。大騒ぎをよそに僕たちは、コインロッカーの前まで行き、番号の合った扉を開けた。その中には封筒が一つあった。
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封筒の宛先はジョアン・クレメンチ受刑者、コルヴァ刑務所となっていた。手紙にはジョゼ・アンジェロとその娘の写真が添えてあった。写真の裏には暗号のように数字が書かれていた。手紙は、ジョゼからクレメンチに当てたものだった。僕たちはその手紙を何度も読み返した。そして思った、この手紙をちゃんと届けよう、それは正しいことだ。
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スラム街の教会は僕たちの憩いの場所だ。警察は敵だが、神父さんは味方だ。ボランティアの英語教師アメリカ人のミス・オリヴィエも僕らに良くしてくれる。教会には彼女のパソコンがあるからそれを隠れて使わせてもらい(先生ゴメン)、ジョゼとクレメンチについてネットで調べた。ジョゼは弁護士、クレメンチは昔、反政府運動の指導者だったようだ。
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ちょっと手掛かりがつかめてきたと思っていた矢先、僕は何者かに突然拉致され車のトランクに詰め込まれた。車から降ろされたら刑事がいて、財布はどこにあるか言え、と拷問にかけられた。僕はとぼけて何も口を割らなかった。諦めた様子の刑事は手下に「始末しろ」と命じてその場を立ち去った。拳銃を突きつけられてもうだめだと思ったとき、銃声がして、僕はそのまま気絶した・・・
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気がついたら、僕は教会に担ぎ込まれていた。僕が行方不明になった時、神父は警察に捕まったと直感し、警察署に出向いて僕を引き渡すように掛け合ってくれたようだ。今は傷の手当てまでしてくれている。
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僕らは、オリヴィエ先生に、刑務所につれてもらうように頼んでみた。僕たちだけでは刑務所には入れてもらえない、どうしても先生の力が必要なのだ。本当の事を話しても信じてもらえないから、ジョゼとクレメンチはガルドの父親とお爺ちゃんということにした。
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ガルドとオリヴィエ先生は、刑務所にクレメンチ受刑者に会いに行って、ジョゼからの手紙の内容を伝えた。ガルドは手紙の文章を丸暗記してクレメンチに伝えたのだ。クレメンチはガルドの言葉に涙を浮かべて聞き入った。そしてクレメンチはガルドを信用して、写真の裏にあった暗号のような謎の数字を解き明かすカギは聖書だと教えてくれた。
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僕は思い出したことがある、僕を殺そうとしたあの刑事はサントスという人物の名を口にした。その人物の命令で刑事は動いているようだった。なぜサントスは僕を殺そうとするのだろう?サントスとは誰だ? 「その名前なら知っている。いけ好かない金持ちの政治家だ」ラットが教えてくれた。
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僕たちは間違いなく謎の核心に近づいている。そのぶん身の危険も大きくなってきたと感じる。僕たちは、オリヴィエ先生に僕らの話をビデオ録画してもらうことにした。たとえ僕たちが消されても、ビデオ動画が残ればきっと役に立つだろう・・・
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謎解きの面白さや、アクションのカメラワークも冴えていて、かなり引き込まれるし、テンポよく展開するストーリーもよくできていて、最後まで飽きさせない。主役の少年3人がとてもいい味を出しているブラジルの社会派サスペンスの秀作。
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「シティ・オブ・ゴッド」で、リオの街の治安の悪さや、警官の規律の低さはよくわかっていたから、さほど驚かない。この作品は、そこから一歩踏み込んでブラジルという国の政治家絡みのひどい賄賂と金権汚職体質を痛切に告発している。リオ五輪の前年の作品だが、五輪開催前に盛り上がっていた権力の不正を弾劾する声と、この作品は何か呼応していたのだろうか?