イペー

名もなき塀の中の王のイペーのレビュー・感想・評価

名もなき塀の中の王(2013年製作の映画)
4.1
ムショーの愛 !

心に問題を抱え、成人刑務所に移送された少年の出会いと成長を描くドラマ。

エリック・ラブは狂犬さながら。
怒りに支配され、衝動を抑える術を知らない不良少年。
本物のワル達が居並ぶ成人刑務所に収監されても、ビビることなく元気に荒んでおります。

移送されて早々に暴れまくるエリック。
所内にはそんな彼を見守る一人の男の姿。
何を隠そう、その男こそはエリックの生き別れた父親、ネビルなのです。

問題児エリックもまだ未成年。
更生に向けてグループセラピーに参加することに。
囚人の間では顔役であるネビルも人の親。
愛する息子が立ち直ることを望んでいるようで。

「オマエはすぐキレる。パパの言う通りにして大人しく…ってオイ、聞いてんのかよオイッ‼︎ キレんなっつってんだろ‼︎‼︎‼︎」

監獄には監獄の掟。
父と子の葛藤を知ってか知らずか、型破りな新入りを快く思わない連中も、裏で暗躍を始めており…。

不器用に不器用を重ねるダメ親父とダメ息子。
時に静かに、時に激しく親子の情を通わせていく姿が描かれる本作。
期待を上回る傑作でございました!

エリックを演じたオコンネルくん、『バイオレンスレイク』から順調に凶悪ロードを突き進んでますなぁ。

ワルそうな顔とワルそうな身体、かなり仕上がった悪童ぶりなんですが、不意に見せる寂しげな眼差しに、眠れる父性をくすぐられてしまいました。

ネビルを演じたベン・メンデルスゾーンがこれまたウマいんですよ。
オコンネルくんを上回るキレキレ演技。

自己愛と父性愛の間に挟まって、ひたすら四苦八苦するダメ親父!
稚拙な方法でしか息子と向き合えないダメダメ親父!
息子の目の前で男の恋人と目配せしちゃうダメダメダメ親父!

どうにも面倒臭くて憎めない父親像を、豊かな表現力で演じ切っています。

そんな救い難い親父と息子、身体を張って思いの丈をぶつけ合うクライマックス。

閉鎖された特殊な状況にあるからこそ、お互いにギリギリの部分まで晒け出し、ぎこちなくも心を通い合わせる事が出来たのかもしれません。

やっぱり二人は親子、しかも相当な似た者親子なのです。

実際の刑務所を使用した生々しさ。
さらに全編通してBGMも無し。
登場人物の細かな視線や動作も含め、ピリピリと張り詰めた空気を纏っています。

リアリティ重視のズッシリとした手応えが胸に迫る、実に素晴らしい"父子愛"映画でございました!

…ダメ親子のヘッタクソな愛情表現がね…もう…涙腺が懲罰房行きですよ…(意味不明)
イペー

イペー