滝和也

オデッセイの滝和也のレビュー・感想・評価

オデッセイ(2015年製作の映画)
3.9
「故郷は地球」

その男は赤く燃える星に
一人取り残された…。
彼の故郷のある国は、
彼を見捨てた。
だが彼は諦めなかった…。
彼は自作の宇宙船に乗り
故郷を目指す。そう彼を
見捨てた地球に復讐するために!

彼の名はマークではなくジャミラ…。

と言うお話では、全くなく、その真逆のお話です。こちらはウルトラマンの名作、ジャミラの回。シチュエーションが余りにも似ていて、全く真逆のお話と言うまるで表裏の如き作品です。どうも見始めてから気になりだしまして、フォロワーさんほぼ全て見てる勢いの作品ですので切り口にしてみました(笑)

そう全てが真逆なんです。大国のエゴ丸出しの宇宙開発や人の犠牲を厭わない姿勢を批判した日本製ウルトラマン。今作は、大国の威信をかけてはいますが、全世界が火星に取り残された彼を助けようと奮闘します。(中国がでてきた辺りは製作者のエゴは感じますが(笑))

そしてマット・デイモン演じるマーク・ワトリーの異常なまでの前向きさ、生きてやるぜ!と言うガッツとユーモアを忘れないヤンキー魂。火星の荒野に立つ、その姿は大西部の開拓者やカウボーイを思わせますね。

そこに生きているのは、開拓者であるアメリカ人のいついかなる時も諦めない強さだったり、生きることの大切さを示している巨大なヒューマニズム、人間讃歌に相違ありません。

一人芝居がかなり長く、ユーモアと気骨を持ったマークをマット・デイモンが好演。どうしてこんな人になれたのかは、バックボーンが、全く語られずわからないんですが、後半展開スピードが上がって気にならなくなってましたし、彼の好演がキャラに説得力を与えていました。

また彼を置き去りにしてしまった船長にジェシカ・チャスティン、宇宙飛行士にマイケル・ペーニャ、セバスチャン・スタン、ケイト・マーラ、彼らを指揮するNASAメンバーにショーン・ビーン、キウテル・イジョフォー等皆が優しく、彼を助けんとする姿は美しかったですね。お気に入りはイジョフォーさんとショーンの2人かな。上に逆らう気骨のある現場指揮官ですよね。

リドリー・スコット、この時78才!エイリアンとは全く違う明るく、前向きな作品を同じ宇宙もので創り出してます。その子細なディティールのこだわりは、やはり世界観を作る匠の技です。赤き世界の火星は正に大西部の様ですし、また地球のNASAや中華航空局のディティールや救出プランの緻密さ、ヘリオス船内の緻密さ、皆が助け合い、困難と戦う姿もジョン・フォードの作品の様なヒューマニズム溢れた世界観を作り上げてます。

惜しむらくは、冒頭部分がマットの一人芝居が続く辺り淡々として眠気が…ただNASAとヘリオスが、カットバックで 入りだすとテンポアップして目が覚めました(笑) 早めにディスコミュージックをかけてくれないと(笑) 音楽は正にドンピシャですので勿論楽しめましたよ。

リドリー・スコットはそう言えば弟、トニーが亡くなってましたよね…生きてほしかったのかな…どんなに辛くても。時期はいつだったか忘れましたが、そんな想い入っている気がしました(T_T)

ヒューマニズム大作
「オデッセイ」
滝和也

滝和也