『ダークナイト』や『シビルウォー』の裏返しなんだろうなー、と。曇天の下スーパーヒーローの倫理を問う、シリアスなトーンのフィルムにはもう飽き飽きだ、と宣言する『デッドプール』。くだらなさ、品のなさを極め尽くしている一方で、女の悪党相手に「ここで女性を殴るのが性差別的？ それとも殴らないほうが性差別的なの？」というセリフが印象的で、ミスター・プールのギャグには実にいまどきな鋭さも備わっている。
とはいえ、デッドプールは第四の壁をたびたび乗り越えて観客をいじってくるわりには、映画における凄惨な暴力の渦に観客を引きずり込むほどのクリティカルなはたらきはせず、『ファニーゲーム』を観たあとでは物足りなく感じる……。（ネタバレ）エンドロール後にプールが観客に対して「まだいるの？」と声をかけてくるが、これはもうジョー・ダンテがやっていることでしょう。
ま、でも、内容から映画の構造まで、ほぼ予想通りでした。期待していただけにちょっとさみしい。
