ベルサイユ製麺

壊れた心のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

壊れた心(2014年製作の映画)
4.1
ツタヤの棚の中から、不意に痛いところを突かれた感じがして、確認したらこの作品でした。いい加減この手のタイトルに反応しないようになりたい…。

ドイツ・フィリピン合作。撮影クリストファー・ドイル。監督ケヴィン・デ・ラ・クルス…?だれ…
浅野忠信主演。ロケ地マニラ。69分。
もう、全ての要素が気になります。

観終えての感想ですが、もう大好きです。そもそもあらゆる表現に善し悪しはなくて、違いが有って、それの好き嫌いがあるだけの話(当たり前ですね…)で、いつも映画の感想はそれに従って書いてます。で今作は、とても個性的で、そこが大好き、という感じです。逆に大嫌いな方もいると思います。
ストーリー自体はごく普通で、始まりから終わりまでの一本道です。ですが語り口がかなり特異で、シーンの意味さえ違っていなければ手法の統一感は無くても良し!という感じです。長回しのアクション有り。ビザールな絡み有り。詩の朗読。死体。百人組手。生演奏。死体。イー・ティー・シー。撮影の手法も(よくは分かりませんが)色々楽しんでいる風で、ともすると映画ではなくて、アートフィルムのメガミックスの様でもあり、人によっては生理的に受け付けないでしょうね…。個人的には、なんとなく80年代の日本のニューウェーブぽさと、フィリピンの超多湿な街並みに親近感があって、なんとも心地が良かったです。意外にグロさも控えめですし。
あと、音楽が!凄く良い。全部良い!普通この手のアート系でアングラな作品の劇伴て、やたらノイズに寄りがちだと思うのですよ。ギターが始終ギュゴ〜と響き、メタルパーカションがゴンガンゴゴン鳴り続ける感じ。でも今作は、凄く肩の力が抜けてるの。レゲエだったり、生バンドの歌謡曲だったり(この辺ちょっと『オンリー・ゴッド』ぽい)、で、圧巻はエンド曲。はっきり言って最近聴いた曲で一番好きです。歌詞も素晴らしい!コレ聴きたさにDVD買ってしまいそう。作品時間69分の内、この歌が9分有ります!因みに音楽も監督の作だそうです。

浅野忠信はのびのびとタダノブ・アサノをやってますね。近作の中では一番本人の素に近そうにも見えました…。ヒロインのナタリア・アセベドさんは『闇のあとの光』の方でした。全然気がつかなかったなぁ。


監督のケヴィン氏、恐らくは商業映画での成功には興味がなさそうな気がしますし、次作が有るか否かも分かりませんが(リンクが無いからfan登録もできない!)、どんなフォーマットであれ、表現活動を続けるのであれば注目していきたいです。せっかく見つけちゃいましたからね。

…ところで“壊れた心”とは⁇