あなぐらむ

肉の標的・奪う!のあなぐらむのレビュー・感想・評価

肉の標的・奪う!(1979年製作の映画)
3.9
永原秀一脚本で当時のオールスター級キャストが集う澤田幸弘の都会派ロマンポルノ。
サラリーマン社会の鬱屈、権力格差を澤田幸弘は幸せそうな女子社員連続レイプという直球描写で貫いて行く。

志賀圭二郎扮するニヒルで掴み所無い主人公の存在感が粒立ち、この荒唐無稽な大人のお伽噺を成立させている。とにかくスジよりレイプという潔い進行がしかし、永原采配と澤田の細やかなカットで画で伝える仕上りになっている。
ヒロインはこの頃大車輪の鹿沼えりで、婚約者がいながら志賀のイチモツの虜になり、苦悩するOLを表情だけで巧く演じている。
意外な女神となる専務秘書に志麻いづみ、タイピスト役の小川亜佐美が車内で犯されているのにミニパトが気づかないシーンは前年の「襲う!!」のパロディか。

音楽はクリエーションなのが嬉しい。志賀がレイプ後、必ずネクタイを直すのだがここに同じブリッジがかかり、印象づける。ネクタイは勿論男性の象徴である。前田米造の撮影も手持ち、車内撮影と快調。
お話のオチはまるで小規模な「蘇える金狼」みたいだが、女たちの強かさがさっと際立ち、志賀の虚無と自嘲の表情には勝利はない。そこに80年代を目前にした男性の姿が滲んでいる。