マヒロ

チャッピーのマヒロのレビュー・感想・評価

チャッピー(2015年製作の映画)
3.5
『第9地区』『エリジウム』のニール・ブロムカンプ監督最新作。人工知能を搭載した最新型警察ロボットが、ひょんなことからギャングの夫婦に拾われてしまう…というお話。

基本的には『第9地区』と同じ骨組みのように思えた。勿論話は違うけど、初っ端モキュメンタリー風の演出から、人間以外の心をもった生命体が周りから迫害される様を描いたり、主人公がタイムリミットを持っているところなんかはだいたい同じ。

土まみれで血まみれなブロムカンプの世界観は好きなんだけど、今作は少しそこら辺控えめで、噂になったカットシーン以外は残虐描写はほぼ無いし、ヨハネスブルグの風景も『第9地区』に比べるとゴミゴミした感じがない(あっちが特殊すぎるのかもしれんが)。舞台となった時代がほぼ現代というのもあるのか面白ガジェットもほとんど無くて、正直物足りなさを感じた。


といっても、この作品独自の面白さってのもあって、それが"子育て"。起動したてのチャッピーは赤ん坊同然で拾い主のギャング夫妻に育てられることになるんだけど、最初は無垢な子供のようだったチャッピーが、あっというまに肩をいからせながら「マザファカ!」とか言い出すあたりが笑える。この夫婦がまたおかしくて、チャッピーをギャングスタに育て上げようと厳しく接する星一徹的な父親になる男ニンジャと(その名の通り手裏剣を持っているんだけど、どんなギャングだよ!)、めちゃくちゃアクが強い見た目なのに母性に目覚めて優しい母親になる女ヨーランディの二人。ものすごい変な二人がものすごい分かりやすい父と母になるという構図が面白かったな。キャラクターといえば、珍しく悪役なヒュー・ジャックマンもハマり役で良かった。『プリズナーズ』でもそうだったけど、自分の考えが正しい!という思いに取り憑かれているヤバい奴が上手い。…そんな役あんまり無いと思うけど。

総合してみると、面白いところこそあれどテーマとか展開の類似性あたりから、『第9地区』の呪縛から逃れられていないのでは?という感じがした。もしかしたら『エリジウム』がボロクソに言われたから原点回帰したということなのかもしれないけど、出来ればもうちょっと違うテイストのが観たかったかなぁ。
@TOHOシネマズ海老名

(2015.88)[18]
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