KouheiNakamura

エクス・マキナのKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

エクス・マキナ(2015年製作の映画)
4.0
今年のアカデミー賞の視覚効果賞をスターウォーズからぶん取ったSFサスペンス。
このCG凄いでしょ!ではなく、物語を効果的に盛り上げるためにCGが使われているので受賞は納得。

さて。ポルノグラフィティがヒトリノ夜で「想像していたよりもずっと未来は現実的だね。」と歌っていたように、21世紀に生きる僕らはテクノロジーの進化にはあまり驚かなくなってしまった。いつまでたっても車は空を走らないし、未来から殺人ロボットがやってきたり、人間さながらのロボットも誕生していない。そんな僕たちの世界よりも少しだけ先の未来、もしも人間とは全く見分けのつかないロボットが誕生したなら…?というのがこの物語の発端だ。

彼女の名前はエヴァ、一人の天才技術者が産み出した最高の人工知能。抽選によってその天才技術者の別荘への滞在を許された青年は、まだ塗装が済んでいない以外はほぼ人間と変わらない彼女との対話を試みるのだが…。

人工知能と人間。古くからSF映画のテーマになることの多い二者を分けるものとは何なのか?メインとなる登場人物4名ほどのこの映画は、その問題に深く切り込んでいく。映画の大半は会話である。技術者と青年、青年とエヴァ、エヴァと技術者。それらの哲学的なセリフのやりとりやシンプルな画面構成、ループするBGMがこの映画を極めてシステマティックなものに感じさせる。淡々と、しかし確実に盛り上がるサスペンス。終わり方の余韻を含めてとても良い映画だった。

閑話休題。この映画で一番ゾッとさせられたのは、青年が自らの身体を傷つけることで自分は人間だと確認する場面。エヴァは機械の身体を人工皮膚で覆っている。青年はエヴァと会話する内にもしかしたら自分も一皮むけば…という怖れを抱く。
人間と人工知能、その違いはもしかしたら薄皮一枚程度のものなのかもしれない…。観客を不安にさせる見事な場面だ。そしてこの場面はこうも訴えかけている。
「あなたは、本当に人間ですか?」と。
KouheiNakamura

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