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エクス・マキナのTEPPEIのレビュー・感想・評価

エクス・マキナ(2015年製作の映画)
4.8
自分のなかで不動のSF映画の最高峰は「スター・ウォーズ」でも「2001年宇宙の旅」でも、「スターシップ・トゥルーパーズ」でもない。僕の中で不動の傑作は「ブレードランナー」である。(正直1番続編作って欲しくなかったし、脚本が「グリーン・ランタン」のマイケル・グリーンな時点でかなりアレで落ち込んでいる…見るけども)
そんな「ブレードランナー」や「第9地区」は実に知的で魅力的なストーリーを下敷きに確固たるものがある。「エクス・マキナ」は公開当時は遠出して鑑賞したのだが観終わって中々立ち上がれなかった。この作品はどんでん返しだ。だってほらAIが人間の感情を持ち、そして恋をするが…という筋書きは過去でもあったわけで今作はそのオーソドックスなストーリーをいかに上手く表現するか…という点で評価されていると考えていた。ところが本作に出てくるAI・イヴァの圧倒的な存在感と、全くの無感情であるシーンと妖艶で、不気味で、人が踏み入れた領域を時々あざ笑うような演出がとにかく素晴らしい。ビッグバジェット作品を蹴散らして、オスカーの視覚効果賞を受賞したのも納得の映像世界。この映画の驚くべき点は「映画」における楽しみ方を十分に発揮していること。説明的でなく、人が生み出した存在が人を超越する存在に化した時の末路をこの映画はまるで未来を描くように伝えている。AIを生み出した男を演じるオスカー・アイザックは全く別人のように狂気のある学者、まるで過ちそのものが具現化された存在をとても上手く演じている。自分自身の証明もテーマの一部であるが、AIから見る我々の常識という名の「非常識」をセリフで表現している。エヴァはいわば、人が生んだ未来でありながら命・感情を持つ機械であり、その事実を自ら知りながらも運命を切り開こうとする象徴である。見れば見るほど展開がわからない本作。最後まで目が離せないとはこのことである。またチューリングテストで「AIが感情を抱いたら」って話か〜それで人に恋して逃亡する〜とかかなと安い考えをしていたが、映画史上これほどAIに恐怖と魅力を感じる映画はない。
総評としてレプリカント以来、魅力的なAI・エヴァを演じたアリシア・ヴィキャンデルはじめとする優秀なキャストたちが閉鎖的空間で描く「エクス・マキナ」は恐ろしく、美しく、知的でそそられる1本である。
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