ひでやん

エル・トポのひでやんのレビュー・感想・評価

エル・トポ(1970年製作の映画)
4.7
ジョン・レノン、ミック・ジャガー、デニス・ホッパー、寺山修司、氷室京介らを魅了し、中でもジョン・レノンはこの作品の興行権を45万ドルで買い取ったことでも知られる作品で、熱狂的なファンによって語り継がれる伝説のカルト・ムービー。

監督・主演は、奇才アレハンドロ・ホドロフスキー。メキシコの砂漠を舞台に、銃の名手エル・トポが最強の男になるため4人のガン・マスターに挑む。

前半は西部劇の様式をまといながら、強烈なバイオレンスと神秘思想をシュールな映像で映し出し、後半では神の復活と贖罪を唯一無二の映像で見せる。

なぜか全裸の息子と旅をするガンマン、エルトポ。モグラの意味であるエルトポをホドロフスキー自身が演じ、幼い息子を実の息子が演じる。

おびただしい人間の死体と動物の死骸が転がる血の洪水、のっけから強烈だ。

早撃ちで盗賊を倒し、ボスの性器を切り取るエルトポ。降臨した神が悪の種を絶ち、奴隷を解放し、新たな世界を創るため清らかな息子を置いて旅立つようだ。

「創世記」というキャプション、涌き出る水、甘くなる水、それらの描写から神、キリストを連想する。

卑劣な手段で最強となるが、彼の姿に虚無と罪悪を感じる。

人と動物を一緒に描くことは自然な事だというホドロフスキーは、動物それぞれの意味をこう語る。

馬は高貴、ウサギは案内役、ライオンは権力、蝶は変身、ミツバチは自己犠牲と希望だという。

早撃ちガンマンという解りやすい物語を難解な描写が埋め尽くし、フリークスが住む洞窟からは更に難解になる。

近親相姦の繰り返しで産まれた奇形。彼らを救うためモグラは洞窟を掘る。外の世界ではフリーメイソンを思わせるプロビデンスの目が埋め尽くす。

皆殺しによる皆殺し…そして衝撃の結末。難解だが魅力的で、何度も観たくなる中毒性がある。しかしオススメはできない…。
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