カツマ

共犯のカツマのレビュー・感想・評価

共犯(2013年製作の映画)
4.0
視線の先には平べったい机と図書館の本。空気のように空虚な時間。ある思春期の孤独には絶望的なほど出口がなかった。この映画は思春期の孤独に真正面からスポットライトを当てている。主人公は彼の彼女の孤独そのものだった。

繋がりを重視するSNS時代の、儚いほどに繋がれない物語。青春時代の青臭さは時に鋭敏な刃となって自らの胸に突き刺さり、この映画に思いもよらぬ結末をもたらしていく。見終わった後に気づく『共犯』というタイトルの本当の意味。水泡に沈むオープニングから張り巡らされる伏線が、気付かぬうちに回収へと向かう。甘くほろ苦い青春時代、それは溺れながらも藁をも掴む・・。

ーあらすじー

ある日、彼女は血を流して死んでいた。そして3人は出会った。
いじめられっ子の男子高校生ホアンは、カツアゲに遭遇した道すがら、知らない女子高校生の死体を発見する。そこでたまたま現場に居合わせた縁でリン、イエの二人と知り合った。死んでいた女子生徒シャーは自殺のようだが、その真相は謎のまま。ホアンはシャーにいじめの気配を感じ取り、リン、イエの二人を巻き込んで、シャーの死の真相を調べることにするのだが・・。

ー見どころと感想ー

二転三転する思いもよらぬ展開力がこの映画最大の魅力だろう。そこに思春期ならではの痛みと孤独を盛り合わせ、友達でもない曖昧な存在の合間に漂う、微妙な距離感を絶妙な筆致で描き出した。水中でもがくオープニングを始めとして、泳ぎ方が分からなくて溺れてしまう思春期の不器用さをセンチメンタルな映像で魅せるカメラワークも素晴らしい。

演者にはいかにも高校生なビジュアルの男女7人。特に女性陣はみな美しく、今後また別の映画で観れることを願ってやまない。台湾映画ならではの瑞々しさと懐かしさが交錯し、意外性のある脚本がスパイスを効かせる。Facebookなど最近のSNS事情に対応した新時代の青春ミステリの金字塔となるべく作品。思春期に孤独と寂しさを抱えたことのある人にこそ、重ねてしまうあの日の記憶がそこにはあった。
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