邦画の実写作品としては久しぶりに良い作品に巡り会えた。
河瀬直美監督の映画は一本も観たことがないので、過去の作品と比較できないが、この映画は「職人の映画」だと感じた。
とにかくアップの画が多い。丁寧に生地を焼く永瀬正敏の手のアップ。
素材に耳を傾けて餡を作る樹木希林の手のアップ。
広く画面を使うのではなく登場人物にギリギリまで近づく。リアルな息遣いが聴こえてくる。
同時にこの映画は「差別の映画」でもある。社会の無理解ゆえに自己との葛藤を繰り返す主役2人に焦点を当てている。
河瀬直美監督は差別が個人にもたらす破壊的な影響をよく理解している。しかし、その部分をことさらに強調して共感を得ようともしていない。ここに監督の「職人」としての側面をみた。