KouheiNakamura

シン・ゴジラのKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
5.0
神との対峙。

何を語ってもネタバレになってしまう作品。しかし、あえてネタバレなしで語ります。
僕とゴジラの出会いは、たしかテレビくんなどの児童雑誌の中。確か「ゴジラvsメカゴジラ」の紹介記事だったと思います。子供心に怪獣という存在に惹かれ、父親からゴジラという怪獣について教わりました。映画をしっかり見たかは記憶してないのですが、いわゆる平成vsシリーズには毎回胸踊っていました。「ゴジラvsデストロイア」のキャッチコピー、「ゴジラ、死す。」には本当に衝撃を受けたものです。それからほどなくしてゴジラはミレニアムシリーズで復活。その頃の僕は怪獣映画への興味をなくしており、「ゴジラ?ハム太郎と一緒にやってる子供向け映画でしょ?」ぐらいの認識でした。それからミレニアムシリーズも「ゴジラ FINAL WARS」という珍作(僕は結構好きな映画ですが)で完結し、しばらくゴジラシリーズは作られなくなります。
興味はあるけど、見返すほどでは…。そう考えていた僕に転機が訪れたのは2年前のハリウッド版「GODZILLA」公開時でした。実に10年ぶりのゴジラ映画、それに伴いオリジナルである初代「ゴジラ」が全国の映画館で上映されました。僕はこの機会を逃してはいけないと思い、実は見たことのなかった初代「ゴジラ」を観たのです。
結果は…衝撃、の一語。とても1954年の映画とは思えない、迫力の特撮に濃密な人間ドラマ。そしてなによりも、人々の怒り・哀しみ・恐怖を一身に背負ったゴジラの強烈な存在感。人類の味方としてのゴジラしか知らなかった僕には衝撃の作品だったのです。続けて見た2014年のハリウッド版「GODZILLA」も細かい不満はあれど、スクリーンに映るゴジラの勇姿には感動しました。

それから、2年。遂に和製ゴジラが復活しました。総監督は庵野秀明、監督及び特技監督は樋口真嗣。正直、第一報を聞いた時は期待と不安が半々ぐらいでした。ハリウッドのGODZILLAが既にやったことの焼き直しになるのではないか?と。
結論から言うと、今回の「シン・ゴジラ」は前代未聞の大問題作にして大傑作でした。事前の心配など杞憂、どころかこちらの予想を遥かに超えた凄まじい熱量を持った作品だったのです。
全編異様な速度と密度と緊迫感の中で繰り広げられる会話劇、着ぐるみでは出来なかったCGを駆使した迫力の特撮場面、そして歴代トップクラスにおぞましく恐ろしいゴジラ…。
またこの映画はゴジラ映画としては異例の、ゴジラに関するある重大な改変をしています。ともすれば旧来のゴジラファンにそっぽを向かれる可能性もあったこの改変。この一点だけでも、庵野秀明総監督と樋口真嗣監督の覚悟のほどが伺えます。彼らがやりたかったのは、僕らの中にあるゴジラ像を一度完膚なきまでに破壊することだったのでしょう。そこから、この映画が提示する新しいゴジラ像が現れる。実に大胆かつ見事な構成だと思いました。
また近年の邦画にありがちな、いわゆる人間ドラマな愁嘆場は皆無。民間人はほぼ登場せず、政治家や自衛隊などの官民にスポットを当て、一見ドライなように見えて熱いドラマを構築。視点を彼らに絞ったことで、未曾有の事態に死力を尽くして対処する彼らの中に自分がいるような感覚がしました。飛び交う専門用語の嵐も心地よく、時折出てくる名ゼリフ・名調子の数々は日常生活でも使いたくなってしまうほど。岡本喜八監督の傑作「日本のいちばん長い日」を引き合いに出した感想が出るのも頷けるほど、会話劇としても抜群に面白かったです。

そして何よりもこの映画を凄まじいものにしているのは、やはりゴジラ。その異形、佇まい、無慈悲な破壊の数々に心底畏怖しました。この映画のゴジラはヒーローでも、守護神でも、自然災害でもない。純然たる、荒ぶる神なのだと思いました。人間の都合で作り出された、究極の怪物。


総じて、観ている間ずっと圧倒されっぱなしな120分。これまでのゴジラを知らない人も、ゴジラファンも納得出来る見事な映画だと思いました。まだ二回しか鑑賞してないので、より深くこの映画を知るためにもこの夏はゴジラ三昧で行こうと思います。
まだ観てないという方は、是非!今、劇場で目撃する価値は十二分にありますよ。超オススメです。
KouheiNakamura

KouheiNakamura