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杉原千畝のQTakaのレビュー・感想・評価

杉原千畝(2015年製作の映画)
3.5
この伝記映画は、面白い。
スクリーンにかぶり付きで観たくなるほど面白い。
それは、今の日本では思いも寄らないほど、ダイナミックに動いた時代のことであるからかもしれない。
そして、杉原千畝と言う人が、その時代に有って、流されずに生きた人であったということが、今この時代を生きる私に響くのかもしれない。
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歴史映画、伝記映画のたぐいは、大概面白くないのだけど、どう
してなんだろう?
たぶん、今のこの時代は、どんな時代よりもつまらないと思う。
とすると、どんな時代を取り上げても、面白い映画になるに違いないと思うのだけど、なかなかそうは行かない。
でも、それぞれの時代を精いっぱい生きた人の物語がつまらないってことは無いし、その人が生きた時代を描いた映画なら、その人を中心に様々な人々の生きた姿がそこに有るはずだ。
この映画には、主人公「杉原千畝」がどんな時代を生きたのか。
その時代を千畝と共に生きた人々の生き様もふくめて描かれている。
激動の時代を、人々が生きたことをはっきりと目に焼き付けてくれる。
ユーラシア大陸を跨いだスケールの大きな物語の前に、唖然としてしまうのだが、実に面白く見られる映画だ。
もちろん、第二次世界大戦、特にヨーロッパ大陸における戦争に詳しくなくても、十分みられる、易しい映画でも有る。
一方で、ひとりの人間の生きた姿も描いている。
杉原千畝とその家族の姿もそこにはある。
あるいは、千畝と共に多くの人々を助けようと奮闘した人々の姿も見られる。
小さな繋がり、一人ひとりの姿がそこに有る。
時代と、その中で生きた家族、人々、そういう小さな姿こそ、丁寧に描かれるべき歴史の事実なのだと思う。
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この映画を観たのは2017年の夏だった。
その頃、この映画の舞台にもなった、リトアニアのカウナスに有る、元の日本領事館の建物が話題になっていた。
そう、この映画の舞台は、まだきちんと現存している。
話題は、その建物の老朽化のことだった。
日本の塗装職人『塗魂インターナショナル』が建物の外壁の塗装や修復を行おうというクラウドファウンディングを行っていた。
映画で見た直後でも有り、そこがどんな歴史の舞台であったのかを考えると、このプロジェクトの意味の大きさを感じた。
日本人が、世界の各地で活躍していることは今も昔も有ることなのだろうと思う。
私にはそういう経験も仕事も無いけど、そういう人、そういうことを支えることが少しでも出来ると良いなと思う。
ということで、当時、クラウドファウンディングに出資したのを思い出した。
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過去の歴史を振り返ると、様々な人々の姿が浮かび上がってくる。
そして、その時代の風景を広く見渡すことが出来る。
でも、今の時代を見渡して、何が起こっているか理解することは、あるいは観ることすら、実際には叶わない。
今のこと、自分のことはなかなか分からないものだ。
だからこそ、こうして、歴史に学ぶことが大切なのだと思う。
そこには、今の自分に不都合なことや、いやなことも有るかもしれない。
でも、そういう失敗や、敗北、間違いから学ぶことが大切なのだと思う。
杉原千畝が、なぜ困難な現実に直面しなければならなかったのか。そのことから学ぶことが有るだろう。
一方で、杉原千畝のように現実を見通して、行動出来るかというと、それは私には叶わないことだろう。
でも、そういう人がそこにいたならば、何かその人のために行動出来るかもしれない。
と、妄想を巡らしながら、また歴史映画を観たくなるわけだ。
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