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グローリー/明日への行進のギズモXのレビュー・感想・評価

グローリー/明日への行進(2014年製作の映画)
5.0
ワシントン大行進後の1965年。
投票権を保証する連邦法の制定を求めてアメリカ南部約80kmを歩いたとされる大規模デモ行進、通称"セルマ大行進"と、その中で起きた"血の日曜日事件"を映画化した傑作。

人種間の緊張が極限まで高まる情勢の中で、武力ではなく団結することで分離社会を変えようとするキング牧師達の姿をパワフルに映し出した、多くの戦略と駆け引きが繰り出される熱い闘争伝記映画。

この映画はキング牧師を聖人としてではなく、一人の活動家として描いており、彼自身の浮気問題や他の運動組織との衝突などといったキング牧師達の裏の素顔や、キング牧師を取り巻く様々な人物の思想や思惑にもフォーカスがなされており、"なぜあの時キング牧師が必要とされたのか"をリアルな目線で深く掘り下げている。

個人的に凄く考えさせられるところは、血の日曜日の惨劇の後、銃で武装して州兵に応戦しようとする人に対して、一人の牧師が
「相手は軍隊だから、一人殺す前にこっちが十人殺される」
「別の方法で勝つしかない」
と言い放ち、彼らを説得させるシーン。
あの惨劇の後にこの言葉を放つのはとても勇気がいると思う。
しかもこれは本当にあったことだ。
そして、二回目の行進で橋で祈った後、危険を察知して引き返す場面も心に残る。
非暴力は無抵抗ではない。
暴力に走れば後に残るのは傷と混乱だけだ。

間違った社会、派閥や宗教の対立、人種間の憎悪が激しくなる中で自分はどうあるべきか。
彼らの願った世界とその意思が今の時代にも宿っていると信じたい。

選挙に行け!
それは我々国民の特権だ!

【余談】
この映画に登場したジョンルイス氏は、2020年に起きたジョージフロイド氏の事件に対して暴力ではなくデモと投票による行動が大事だと唱えています。
またそのほかにも、この映画を監督されたエヴァ氏はこの運動の後の時代を描いた『憲法修正第13条』も製作されていますので、気になる人はそちらも是非観てほしいです。

【追記】
つい先日ジョンルイス氏が癌で亡くなられたことを知りました。
自由の為に戦った英雄の意思がこの地上で絶えることなく続いていきますように。
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