ひこくろ

潤の街のひこくろのレビュー・感想・評価

潤の街(1989年製作の映画)
4.2
在日朝鮮人と日本人の恋の話の走りって、てっきり「GO」とか「パッチギ!」辺りかと思っていたので、それよりも以前にこういう映画があったことに驚いた。

出だしはかなり80年代の青春映画色が強く、特に女の子の演技に癖がある。
もしかすると、ここで受け付けない人もいるかもしれない。
ただ、そこから先は徐々に、在日朝鮮人という問題がにじんできて、映画の色を変えていく。

在日一世にとって、日本は地獄のような場所で、彼らは過酷な歴史が生み出した、日本への憎悪を隠せない。
在日二世になっても、状況はあまり変わらず、彼らも迫害の歴史を抱え込み、日本を恨んでいる。
でも、生まれも育ちも日本で、親たちほど迫害されてこなかった在日三世にとっては事情はかなり異なってくる。

彼らは「歴史に囚われずにもっと自由に日本人と付き合おうよ」と語り、行動する。
その一方で、彼らには決して日本人と同じではないという現実も突きつけられる。
日本で生まれ育ったのに、外国人として登録され、朝鮮人だと差別される。
親たちからも、屈辱と辛苦の歴史を叩き込まれる。
彼ら自身も、自分のアイデンティティーがわからなくなっていく。
そういう三世の悩みや、一世、二世の抱えた闇が、さりげなく見えてくるのがすごかった。

また、李麗仙、初井言榮、井川比佐志の三人の演技がもう本当に素晴らしすぎるほどに素晴らしい。
悲哀、したたかさ、生命力、滑稽さ、いろいろな感情をこれでもかと演じ切ってみせている。
この三人が映画の核になっていると強く思った。
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