てる

母と暮せばのてるのネタバレレビュー・内容・結末

母と暮せば(2015年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

全くの偶然だけど、終戦記念日に観た。正にその日に観るべき作品だった。
山田洋次が珍しくファンタジーを描いた作品だった。幽霊になった息子が天涯孤独になった母のところに会いにくる話し。感動的ではない。ただただ、悲しい。未来のある耀かしい少年が戦争により、無惨にも命を奪われる。そのお母さんの気持ちを想うと胸が張り裂けそうになる。この子が生きていたらあんな仕事に就き、こんなことを言っていただろうと、途方もないことを考えてしまう。そうすると、寂しい気持ちが一瞬和らぐものの、その後どうしようもない喪失感に襲われる。叶うことのない未来に焦がれ、残酷な現実を突きつけられ、絶望する。この作品はこれの連続だ。
ラストは予想通りの展開だった。悲しかった。「ずっと一緒にいられるの? 嬉しい!」そのお母さんのセリフが悲しかった。二人の息子と旦那を失い、義理の娘を手放し、孤独でしょうがなかったのだろう。現実の世界には彼女の死を悲しむ人がいるのに、それを全く感じていないのがなおのこと悲しい。
生きていても楽しいことなんてないってのを言ってしまえるのは、自分のことしか見えていないということだ。もっと生きていても良かったのに。楽しいこともあったかもしれないのに。死ぬことに喜ぶというのは私からしたら狂気だ。最後に彼女の死を祝福するかのような描写は私には禍々しく見えたし、死んだことで幸せそうな彼女の姿が痛々しくて、涙が込み上げてきた。
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