間違いなく傑作だとは思う。
けれども終始胃がキリキリと痛かった。
この恐ろしいほどの生々しさは何なのだろう。
「恋人たち」はまるで我々のいる世界と地続きのような極めて現実に近い物語が紡がれる。
主に3つの視点から時折交錯を繰り返しながらストーリーが進むが、この映画において明確な答は提示されることはない。
作品を構成する99パーセントは救いようのない絶望とやり切れなさであり、かつそこに安易な希望を与えることをこの映画は許していない。
しかし、そこが橋口亮輔監督の狙いなのであろう。「恋人たち」は観客ひとりひとりに絶望の果ての答を問うている。そんな気がしてならない。
生々しさを極限まで追求した演者たちも素晴らしいが、特筆すべきは劇中のセットのリアリティ。究極の生活感を感じた。