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仁義なき戦いのHKのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い(1973年製作の映画)
4.9
美納幸三の手記を元に飯干晃一が小説家したものを笠原和夫が脚本、深作欣二が監督をした日本のヤクザ映画の代表作。

暴力を愛した男、深作欣二の代表作であり、それまでのヤクザ映画で当たり前だった「仁義を通し悪を倒す」ヤクザ映画のセオリーを覆した作品である。

しかし、徹底して彼らを悪として扱ったものではない。例えそれが法に違反していたとしても、契りを交わしたものとして初めは家族のように一緒だった仲であった。

しかし、朝鮮特需などというもので規模も何もかも知らぬ間に増大し、次第にそれまで仲の良かった組員の間に溝が起き、そこから抗争が激化していく。その様たるや、まるで膨らんだ泡がはじけるバブル。家族経営の弱点ですら露呈する。

一番初めは気の弱そうで頼りがい無さそうだけど優しそうだった山守の親分が最後の最後で本性をさらけ出すのは怖い。彼は上に立つべきじゃなかった。結局この映画で一番の悪は気弱そうな人間だけであった。

最後の菅原文太演じる広能がてっちゃんの遺影に向かって放つ銃声は、全ての仁義に対する怒りからなのか。

これほどまでに、人間の負の部分を描き切った映画は他にないのではないだろうか。しかも恐ろしいのは自分が権力を持ったら山守の親分みたいになりそうな気分に陥るのだ。なんたって、そこらへんにいそうなおっさんなのだから。

裏の世界でも表の世界でも、今じゃ偉ぶることができなくなってきた。半年前に話題になった日体大の反則タックル問題。町山さんも指摘していた。

現代の日本で横行するパワハラにも、この映画は精通するのかもしれない。

今誰かの上に立っている人間にこそ見てほしい映画。
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