『スパイの妻』を観た後、猛烈に脚本を担当していた濱口監督の過去作を観たくなり、友人に借りたDVDから鑑賞。
[あらすじ]
婚約相手の誠一がいながらも、かつての同級生との不倫関係を続けている永子。
そして、訪れた結婚式の日、真実が白日のもとにさらされて……。
[感想]
男女関係のもつれから浮かび上がる"他者を信じること"の凄まじさ。
『スパイの妻』の物語へも共通していく濱口作品の核が如実に表れた、少し滑稽な人間ドラマだった。
[濱口作品として]
1時間尺といえども、滲み出る濱口作品としての面白さ。
河井青菜さん、岡部尚さんといった監督の前作『PASSION』に引き続く役者陣の起用はもちろん、「電車」、「窓際に寄りかかる登場人物」といった、監督作品お馴染みのシーンも興味深い。
なんといっても、男女間における「信じる」ことについての物語が、いかにも濱口節という印象。
4人の男女を中心にした滑稽な恋愛模様が、クライマックスの結婚式で集束していく展開も見事だった。
[作品を彩る心地よい音楽]
アコースティックギターの音色に、漂うような歌声。
作品序盤から、本筋とは関係なく写し出され、物語を彩っていく男性2人の不思議な音楽も魅力的だった。
歌を担当した岡本英之さんは、濱口監督の代表作のひとつ『親密さ』でも音楽を担当しているほか、『スパイの妻』のエグゼクティブプロデューサーとしても活躍しているそう。
多岐にわたる才能に驚きつつ、今後の活動にも注目したくなった。
[地味に気になるカメオ出演]
また、クレジットで、クライマックスの挙式シーンにおけるエキストラを確認していると、思わぬ発見が……。
いまや、日本映画を背負う人気監督となった今泉力哉さんほか、2018年に『ゴーストマスター』を公開した監督・ヤング・ポールさんがいたりと、インディーズ映画ファンには少し嬉しいサプライズがあった。
[終わりに]
長尺が多い濱口監督作品の中では、かなり短い1時間という尺。
そのコンパクトさの中に、作家性が凝縮された内容と、濱口作品の入門としても見やすい本作。
ソフト化されておらず、鑑賞するためには、特集上映や衛星放送、もしくは、サンクスシアター(ミニシアター募金プロジェクトの特典)を使用するという、敷居の高さはあるものの、気になっている人は、観て損のない一作だと思う。
参考
▶ Let's Talk by hideyuki_okamoto
https://soundcloud.com/hideyuki_okamoto
(実は、ここから、挿入歌が聞けたりします。 ※本人の公式)