航海士を夫にもつ新妻（白川和子）が、不満足な性生活に苦しめられたことにより、男の体を貪り尽くす色情魔へと変身してしまう。抑圧状態に陥っている若妻の「性のアドベンチャー」を描いている、日活ロマンポルノ。

日活が成人映画路線となるロマンポルノを開始した直後の初期作品。「性衝動により生み出される混沌状態」という、ロマンポルノの定型（性愛ドラマの定型）が採用されている。成人映画界の功労者、白川和子が稀有な役者力を発揮している。

妻の失踪を知らされた夫（大泉隆二）視点の捜索劇と、姿をくらました妻視点の不可思議な性行動を、平行線で描いていくスタイル。ベッドの縁を使用した角オナニー、映画館での痴漢プレイ、労働者に対するエロエロ光線など、肉欲がノンストップ状態になる。

ちなみに本作では、白川和子をシンガポールに売り飛ばす中国人の役柄で、60年代のピンク映画を牽引した伝説の女優・左京未知子が出演している（本作を最後に消息を絶つ）。ハダカの女体が映画館のスクリーンに投射されている衝撃を追体験すべし。

遠洋漁業だか海上自衛隊だか船で長旅を続ける旦那を悶々とひたすら待つ色情狂の新婚妻が夫婦の継続を犠牲に自らの性を解放していくニンフォマニアックパートと、久しぶりの陸に降り立ち再び円満な性生活が送れると意気揚々帰るが妻の失踪を知りその行為への理解に苦しみひたすら妻を求めて都会を彷徨い歩くアントニオーニパートとのクロスカッティングという構成がバチバチに決まってるし、心情とリンクする情景だったりブツ撮りの類は加藤彰が見逃すはずはなく、後半2つのアブノーマルな長めの絡みは若干キツかったが、真っ白なキャンバスにオレンジを塗りたくる妻と死にたてほやほやな死体なるキャンバスに緑を塗りたくる夫１つの行為で2人の心を繋げる皮肉な映画的トリックはなかなか鳥肌モノ。そしてここでは無い何処かへ彷徨い歩く二人、浅川マキの「夜が明けたら」。やはり日活ロマンポルノにおける白川和子の功績は計り知れない。

2020-45

白川和子が若干モニカヴィッティに見えてくる不思議。浅川マキ『夜が明けたら』は少し嬉しくなったがムードがあるかと言われれば…
畳に打ち捨てられた3千円の側を小さめのゴキブリが這うシーンにリアリティを感じる

• #tjr2020