宮下順子のハイテンションな濡れ場が見所。曽根中生らしくアンモラルで不健康なテイストが活かされているロマンポルノでヌメヌメとしたカメラワークや役者達の大胆な脱ぎっぷりはさすが。

当時流行っていた三流エロ劇画みたいな内容なんだが、７０年代らしい叙情的な画面構成もしっかりしていて短い尺を一気見できるエロ映画に仕上がっている。桂千穂のシナリオの賜物でもある。

「ちょっ💦あ〜ん！いや〜ん！」みたいな女性の喘ぎ声が懐かしい昭和の雰囲気プンプンで今観るとちっともエロくないのが不思議なのだが、総じてcoolな不倫映画の佳作に仕上がっている。

結婚七年目にして倦怠期に陥った夫人（宮下順子）が、亭主関白からの解放を求めて、性の新境地へと旅立つ。夫（長弘）との結婚生活が恋愛の延長線上ではなくなった夫人の視点を通して「女性の幸福論」を説いている、日活ロマンポルノ。

自由奔放な姉（白川和子）と妹（相川圭子）に感化された宮下順子が、奇行と妄想を繰り広げていく。影山英俊演じる童貞君の挙動不審な動きが、二十歳頃の自分の姿を見ているようで、居ても立ってもいられなくなる。

童貞君は宮下順子に恋い焦がれるあまり、神奈川県の逗子駅から長井までを徒歩で追いかけていく。気になったので地図で調べてみたら、約16キロメートルとのこと。意中の人を盲目的に追いかけて行くのならば、実際にできてしまうかも知れない。

結婚生活において喪失してしまったパッションを、夫人が追求していくという王道ストーリー。「私は色情魔」という看板を首からさげた宮下順子が、渋谷の街中を練り歩くシーンを実際に撮影したが、話の流れにそぐわないためカットしたという逸話あり。

• #エロ映画

「足の指にマニキュアを塗ると娼婦の気分になる」。童貞と人妻のボーイミーツガール、あるいは情事を目撃する他人から当事者への宮下順子の転向。
割れるガラス、ハンガー、メーター、明滅するナイトクラブのライト、曽根中生の演出が冴え渡る。蜘蛛の巣だらけの部屋で並ぶ男女のショットがこの上なく良い。
ロマンポルノ常連俳優である影山英俊さんが従兄弟に若干似ていて毎度親近感がわくのだが、本作では爆走するなど活躍の場が多くその意味でも満足。

• #tjr2017