おおさこ

クリード チャンプを継ぐ男のおおさこのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

あの『ロッキー』シリーズのスピンオフです。
1976年から2006年の間に6本も作られました。その人気シリーズをスタローンが託した相手は現在29歳のライアン・クーグラー監督です。デビュー作の『フルートベール駅で』が絶賛された若手注目株。さすがスタローン見る目あるわ!と思っていたのですが、何とクーグラー監督がこの『クリード』のストーリーをプレゼンした時はまだデビュー前だったそうです。一本も撮ったこと無い新人に賭けてみるスタローン。熱過ぎかぁ!!売れずにくすぶっていたスタローンは『ロッキー』の脚本を自ら書いてチャンス掴みました。クーグラー監督に若い頃の人物を重ねていたのでしょうか。

物語は少年院でのケンカから始まります。激しく殴り合う少年たちの姿を捉える為に廊下からぐーーと長廻しで食堂まで迫っていくカメラワークに一気に魅せられました。今でのロッキーシリーズとは明らかに毛色の違うリアルでシリアスなトーンです。独房でクリード夫人と初めて出逢うアドニス少年。その頑な表情は彼が今までどの様に世間と対峙してきたのかをセリフで語る以上に巧みに表現しています。父親の存在を知り、名前は?と聞くアドニス少年の表情と強く握られた拳がフッと柔らかくなると同時に、どぉーーーんタイトルいん!『クリード』この流れだけでもう傑作の匂いプンプンです。

全体的なストーリーも本家をサンプリングしつつ大幅にグレードアップされていました。まず、主役かチョーイケメンに!スタローンも良いですがマイケル・B・ジョーダンの方が圧倒的に洗練された雰囲気です。ニワトリとの鬼ごっこ!ロッキーの亀がどデカく成長!ランニングに並走してくる人々が今回はバイカー集団に!星条旗パンツ再び!きっと他にも多くの旧作オマージュがあったと思います。単なる繰り返しに終わらずしっかりアレンジされている所に監督のロッキーシリーズへの愛を感じます。生卵ゴクリや生肉ビシバシもこの後の作品で観れるのでしょうか。

同じジムの選手との壮行試合ですが、僕はてっきり負けると思っていました。ラストに向けて一旦負けて復活する事で物語的に枷をプラスしてカタルシスを倍増させる。多くの映画がとる手法です。だから、アレーー?どうなんだろーと思っていたら、まさかのロッキーガン宣告。アドニス、序盤で1回負けてるし、ロッキーが枷を負う事で2人のチーム感も増してより良い展開です。そして、病室での腕立てシーンでついに聞き馴染のある鐘の音が鳴ったら最後、怒涛のラストスパートでテンションは天井知らずで上がりっぱです。

ラストの試合も2ラウンド以降、壮絶な打ち合いになってからの編集のテンポのなんと小気味良い事。客席の照明が落ちて2人だけに光が当たっている演出もアスリートがゾーンに入る瞬間ってこんな感じか!と思わせてゾクゾクさせられました。そして、アドニスが敵のフックを受けて完璧にダウンをしてしまうシーン。向こう側に行ってしまいそうな瞬間、浮かんだ父の姿で意識を取り戻すアドニス。主人公が一度負ける展開をラストのラストに持ってきたかぁー!と思いました。一度死んで蘇る。そこからは例のメインテーマともに号泣必至です。アドニスの〝自分は過ちじゃない〟と証明する為に闘うと言うセリフも、父の為でもあり自分の為でもあると言うのが本当に本当に良かった!

エンディングも例の階段をロッキーが叱咤されながら登ると言うのが物語が次の世代に継がれて行ったんだなぁー、という思いをより強くするもので見事な幕切れでした。