しおえもんGoGo

ハイヒールの男のしおえもんGoGoのネタバレレビュー・内容・結末

ハイヒールの男(2014年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

なんかLGBTの映画を連続で見てる気がする。
原題は「ハイヒール」だけど、この「の男」は必要だったのだろうか。

男も惚れる男の中の男、圧倒的な戦闘力と暴力性、クールでニヒルな雰囲気、どんな修羅場も危険を顧みず飛び込んで傷だらけになっても生還してくる強靭さ。

誰もがうらやむジウクのこの姿が、すべて自分の中の女を押し込めるために身に着けたものだったというところが切ない。
「圧倒的な数の敵に単身立ち向かい、韓国映画らしい残虐さで敵を倒す」というアクション映画のヒーローで良く見る行動が、そのままジウクの苦しみの結果であり、まるで自傷行為のような痛みを伴っているという構造が切なくてたまらない。

そしてその戦闘シーンがまたスタイリッシュでカッコいい事…。特に最初のスーツ姿で長身から繰り出されるアクションは本当に惚れ惚れする。でもみんなが(私も含めて)憧れを向けるほど、褒められているのはジウクの本当の姿じゃない事実が彼(彼女)を苦しめるのだろう。

そんなジウクがついに自分の本当の自分に生まれ変わることを決意したのに、今まで作ってきたペルソナがそれを許さない。大金はいるし、すべての生活を投げ捨てる必要もある。でもやっと、やっと一歩を踏み出したのに、かつての親友の妹の危機が訪れる。
あの時が本当に最初で最後のチャンスだったんだろう。不正に手に入れたお金もあり、刑事も辞め、心から女になる決意をして、本当にたった一度のすべてが揃ったチャンス。でもジウクは行けなかった。
女の服装とメイクのまま、かつての男の中の男としての暴力性を発揮するジウク。手術が途中で止まってしまったパブのニューハーフの様だ。

結局妹を守るという約束を守れたけれど、本当の自分になることはできなかった。そっと小指を立ててみてはまた戻す小さなしぐさが辛かった。

主演のチャ・スンウォンは、どこか諦めも感じる虚ろな目が印象的。可愛い後輩に「兄貴の女装姿を見て吐きそうだった」とふざけて言われ、こういう会話って珍しくもないのに、どれほどジウクの心に刺さっただろう。ジウクの真の姿を見て一旦は拒絶したその後輩に「キレイだった」って言われて、私も泣きそうになった。最も身近な人に受け入れてもらうってすごく嬉しかっただろう。

本当の自分になりたいだけなのに、それがこんなにも困難を伴うとは。
LGBTについて考えさせながらも、エンタメ力もしっかりあるいい映画だったと思う。
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