カテリーナ

ボーダーラインのカテリーナのネタバレレビュー・内容・結末

ボーダーライン(2015年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

恐ろしい映画だ
この映画の前半で我が目を疑う光景を目にする
まさか、そんな、ここは地獄か?
嫌、地獄では無い
麻薬カルテルに支配されている
年間2500人が殺されているというメキシコのフアレスという街だ
麻薬を巡って縄張り争いや
抗争が繰り返されている
そもそもカルテルって言葉自体
この映画を見て初めて知ったくらい私と世界が違いすぎる
だからこそ私はこの映画を選びその世界を垣間見るのだ
脚色があっても間違いなくここでは人の命が軽すぎる

ベニチオ・デルトロが不穏な空気を漂わせ 何か世間に背を向けて生きているような佇まいをみせる
エミリー・ブラントが新しい仲間としてやってくるも彼女の方を見ない 対照的にジョシュ・ブローリンはニヤニヤと舐め回すように彼女を見る エミリー・ブラントの
自信に溢れた顔から徐々に不安の色を隠せなくなって行く これからどこへ向かっていくのだろう?
憎むべき犯罪に対する怒りや悪の芽を摘んで行こうとする情熱や士気は見当たらない

何処へ行ったのか
途方に暮れるのだ

それにしてもベニチオ・デルトロ
あらためて良い俳優だと胸に刻んだ
多分これからもこの刻印は消えることは無いだろう
彼のある秘密が
わかった瞬間に私の身体に
彼の悲しみが乗り移りとめどない涙となって私の体内から溢れて行った
鑑賞後は表現できない虚無感に襲われる 一体この不毛な闘いに
終止符をうつ日がやってくるのだろうか?

麻薬抗争の影で巻き添えをくうのはいつも弱者である
ラストシーンのサッカーをする
子供達とそれを応援する母親たち
あの、「音」でその場が凍りつき
動けなくなる 耳を澄まし そして
何事もなかったかのように
また、はじまる
しかし、全てを諦めた
母親の横顔は希望の色が消えていた
カテリーナ

カテリーナ