ユーモアとスピードによるシリーズの継承と解体
「フォースの覚醒」に課せられた使命は、旧作のキャストを集結させ、ストーリーもビジュアルもそっくりそのまま受け継ぐことだった。
出来上がった作品のさながらEP4の焼き直しのようになってしまい、ファンが愕然としたことは想像に難くない。
がしかし、旧作と新シリーズをシームレスに連結したというただその一点において、監督J・Jエイブラムスは完璧な仕事を成し遂げたのだと思う。
さて、J・Jからバトンを受け継いだのは「ルーパー/LOOPER」のライアン・ジョンソンである。
彼がメガホンと脚本を兼ねた「最後のジェダイ」は完結篇へと繋がるいわば架け橋的な存在。
一般に3部作の真ん中は傑作が多いとされる。1作目で登場人物の紹介はすでに終わっているし、また物語を完結させる必要がないため自由度の高い物語を紡げるからだ。
「最後のジェダイ」もその例に漏れず、オープニングからエンジン全開。作品のテンポの良さはシリーズでも指折りで、スピード感が前作とはまるで違う。
くわえて本作はウィットに富んだキャラの掛け合いが随所に盛り込まれ、シリアスとユーモアが絶妙なバランスで混在している。
EP7と比較すると、J・Jがファンがスターウォーズに望む(と思われる)要素を全て取り入れようとしたのと対照的に、ライアン・ジョンソンは観客の予想を全て良い意味で裏切ってくれる。
こうなるだろうな、というこちらの予想が次々と覆されていく心地よい展開が続く。シリーズ最長となる150分間の長尺を感じさせないよう絶妙なさじ加減で作品がコントロールされている。
「フォースの覚醒」が切り開いた作品世界の定石、お約束を継承しながら、一方でこれまでにはないユーモアとスピードを付加していくことで作品世界を解体し新たな世界を構築していく。
「ローグワン」はスターウォーズの新しい形をしたが、本作もまたシリーズの大きな変化のうねりを感じさせる力作だと思う。
この潮流を引き継いでEP9のメガホンを撮るのがJ・Jエイブラムスというのが不安ようであるが…。
天童よしみみたいな子が最高でした。