フラハティ

ソウ6のフラハティのレビュー・感想・評価

ソウ6(2009年製作の映画)
3.4
「やぁ、ウィリアム。また会うとは思わなかっただろう。」


おぉ…見事に復活したな。
4、5での低空飛行が、本作でようやく上昇気流に乗り始めた。
シリーズでも2番目に好き。


4と5では過去作の裏話があまりにも多かったが、そのおかげで本作ではある程度の下地が出来ていた。
そのため、そこまで過去を掘り下げる必要がなかった。
かつ、ストーリーと同時進行で行われるゲームもおざなりにならず、ちゃんとした意味を持っていたのは大きい。

ゲームのプレイヤーは保険会社のウィリアム。
こいつがほぼ悪者であるため、今まで特に悪いこともしてないのにゲームのプレイヤーにされていた過去作と比べると、格段にましには思える。
作品自体も、初期のジグソウが持っていた"生への執念"的な意味合いを思わせる。

この視点が非常に上手く描かれていた。
生きることに執着した人間が、死ぬ間際に見せる姿がとてつもなく印象的に映る。
無実な人がゲームに仕掛けられるというところはあったが、これをウィリアムは保険料金の支払いに難癖をつけて拒否することで、相手の命を間接的に見殺しにしていた過去とクロスさせる構成。
金を払う相手を選択するウィリアムは、まるで相手の命の権限を握っているようなもの。
その重みがどれほどのものなのか、それをゲームのなかでウィリアムは学んだだろう。


同時進行として、後継者問題の絡みがある。
4から明らかとなった後継者は、観客からすれば三作一緒に過ごした仲。
後継者のメッキが段々と剥がれていく様は、サスペンスの犯人側の目線として立たされており、緊張感を感じさせる。

終盤にかけて、メインであるストーリーとゲームのクライマックスが並行に繋がれていくのは、これまでの4、5よりも作品としての魅力はあるかなと。
終盤にじわじわと追い込んでいくので見応えが十分にある。
冷静に観れば警察とFBIの無能さがあからさますぎるし、後継者もすげぇ雑な仕事してるんだよな。
でもそのおかげでこっちも多少ドキドキはするので許す。笑
あと、このゲームのために一晩で十人以上も誘拐した後継者は有能か。
どう頑張っても無理そうなんだが。
こいつは有能なのか無能なのかどっちなんだよ。笑


4と5が完全に過去作品の裏話に頼った構成だったが、本作で『saw』本来の意味合いを再確認させてくれるようなクオリティだったと思う。

エンドロールの最後の最後に流れる映像は、ある人物の優しさを感じさせる描写。
これは、シリーズをずっと追い続けてくれたファンのための救済のような気もするな。
散々な評価をしたこともあるけど、『saw』のどのシリーズに関わった制作者たちも、『saw』自体を愛しているのが深く伝わる。
だから嫌いになれないんだ。
やっぱり作品への愛情って、観客にも伝わるんだなあ。
あ、あとひとつだ…。
フラハティ

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