スティーブ・ジョブズが極めて優れたイノベーターであったことは疑いようのない事実だが、一人の人間としてはどうであったか。
本作は彼の製品のプレゼンの裏側を描くことで、人間スティーブ・ジョブズの内面に肉薄していく。
マッキントッシュ、キューブ、iMacという3つのポイントに絞りストーリーを構成している点が秀逸。
アシュトン・カッチャー版はこれまで散々垂れ流されてきたジョブズの逸話を上辺だけなぞったような焦点がぼやけた映画だったのに対し、こちらは極めてテーマが明確な作りに。
完璧主義を追求するも自身が人間として大きな欠陥があるジョブズ。娘との確執を中心に周囲との相容れなさをスピード感ある演出で描く。
膨大なセリフの応酬は同じ脚本家の「ソーシャル・ネットワーク」を彷彿とさせるが、ダニー・ボイルのテンポの良い編集も相俟って緊張感が絶えず持続する。
マイケルファスベンダーは決してジョブズに似ているわけではないのだが、ジョブズの持つ弱さを丁寧に体現。観る者に強烈な印象を残す。