KouheiNakamura

64 ロクヨン 前編のKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

64 ロクヨン 前編(2016年製作の映画)
2.0
豪華キャスト競演、ベストセラー小説の映画化、「映画史に残る傑作、誕生」というキャッチコピー…。これだけ並べられれば期待するなという方が無理というもの。昨今流行りの二部作公開にしたのも、一本の映画では収まらないからだろう。さぞ重厚な映画が観られるのだろうな…と鑑賞前は期待していました。
二時間後、その期待は見事に裏切られました。

まず、記者クラブのメンバーの演技及び演出…。酷すぎませんか。大勢で寄ってたかって主人公の三上広報官に野次を飛ばしたり、三上広報官の言うことを大人気なく無視したり…。あんな描き方をされたら、記者クラブはバカの集まりと思われても仕方ないですよ。もちろん彼らは彼らなりのプライドや仕事への意識があるからこそ、ああいう態度をわざと取っているというのは分かりますよ。しかし、それなら彼らが懸命に真実を追い求める場面を入れないと不公平でしょう。この映画の中での彼らがやっていることと言えば、三上広報官に文句を言うか仕事終わりにスナックで騒いでいることぐらい。どこの中学生かと本気で疑う面々ばかりで頭を抱えました。本年度アカデミー賞作品賞の「スポットライト」の記者たちを見習って欲しいです。

次に、お話の問題。実はこの前編では64事件はさほど進展しません。上映時間の大半は警務部と記者クラブの対立や三上広報官の家庭事情、警務部と刑事部の対立…などに費やされています。二時間の映画内で色々な話が出てきますが、どれもこれも中途半端でとっ散らかった印象しか受けません。特に三上広報官の家庭事情の場面は描写はおざなり過ぎて、何が何やら分かりません。三上さんの娘さんは情緒不安定なんですか?原作を読めば分かるんでしょうか…。

また主人公の三上広報官はいつも眉間にシワを寄せ、突然怒鳴ったり泣いたりするので怖いです。演じる佐藤浩一さんが達者なので一つ一つの場面に込められた熱量は凄いですが、心情変化が唐突なので受け入れづらいです。また邦画特有のなんとなく良いことを言えば皆が納得してくれるという、クライマックスの熱弁シーンには辟易しました。あの流れであんなことを言われても、記者クラブメンバーは納得しないと思います。あの場面で三上さんがやっているのは単なる論点のすり替えです。感動できるわけがありません。
悪い意味で熱演頼り、感情的な映画になっているのではないでしょうか?撮影、音楽、編集もいまいちキレが悪くテンポも悪いです。

総じて、この前編だけでは謎も伏線も投げっぱなしで感傷的で雑な作品だとしか思えませんでした…。
もちろん、滝藤賢一さんや永瀬正敏さん、窪田正孝さんらの好演など見所がないことはないのですが…後編にもあまり期待は出来ない作品だと思いました。
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