カテリーナ

先生と迷い猫のカテリーナのレビュー・感想・評価

先生と迷い猫(2015年製作の映画)
3.5
元、校長先生の森衣さんが
袋を下げて
パン屋さんへ向かう
店主は愛想良く挨拶をする
無表情な元、校長先生は袋からおもむろに
食べかけのパンを見せて
「いつものパンじゃない」と一歩も引かない勢いで真っ直ぐに店主を責めるように見つめる
店主の愛想笑いの顔が曇る
「わかりましたか?材料費が高騰して
バターを変えたんです」
「これで決心がつきました この店を畳みます」
店主はサバサバと思い切った事を先生に告げる
それを聞いた先生は困惑し
声にならない音を発する

冒頭から校長先生との会話で
店主役のカンニング竹山が芸達者なところを披露

たっぷりと偏屈なところを観客に示して
その後に少しずつ頑な心をほぐして行く
イッセー尾形の一人芝居のような
見事な表現力
先立たれた妻の慰霊の前にいつもの
パンを先に供えて
「これが最後なんだって」
猫を抱き優しい眼差しで微笑む
慰霊の写真を見ただけで
生前どんな風に夫を癒していたかわかる もたいまさこの存在感

「お父さん、ほら、猫が来ましたよ」
縁側で明るい陽射しの中迷い猫を抱きしめる キラキラと眩しい陽光
その場面は暖かくてこの世の中で一番
居心地の良い場所だ

自分の心の狭さで引き起こした
小さな事件

迷い猫に餌を与えることで生きがいを見つける女たちは命を育む象徴
そして、男は失ってからその大切さに気付く

イッセー尾形が味わう後悔
その痛みが伝わってきて
胸が痛んだ

そしてお話しは先生のその小さな罪を許さず
先生の横顔を照らす明るい陽射し
そして聞こえてくるのは
懐かしい妻の声
夢の中のように響く
カテリーナ

カテリーナ