ろ

軽蔑のろのレビュー・感想・評価

軽蔑(1963年製作の映画)
3.9
「軽蔑するわ。これがあたしの気持ちよ。だから愛せないの。軽蔑してる」

今作には女性の複雑な心理がよく描かれています。ハタチそこそこのお子ちゃまな私は、理解するのになかなか苦労しました(^_^;)


今作は映画「オデュッセイア」の撮影中という設定。
なので、「オデュッセイア」の登場人物にブリジットバルドー演じるカミーユと夫ポールが投影される形で物語が展開します。

「昔はすべてが共犯の歓びの中で無意識に過ぎていった。何もかもが異常で魔法のような気軽さと共に起きた。自分でも気づかぬうちに」

ポールは映画脚本の仕事をするのは、カミーユのためだと言う。まるで、感謝しろと言わんばかりに...。彼女にとってはポールが小説を書いていた、あの貧しい時の方が楽しかったのだ。

「さっきから変だぞ。どうしたんだい?」
「何でもないわ。そう言うと思ったわ」

カミーユがポールを許せないのは、通訳の女の子にちょっかいをかけたり、親しげに話していたからではない。
自分に言い寄ってくる男を気に留めず、ほったらかしにしたからだ。まるで、自分に関心がないかのように。

このポールの行動とカミーユの心理が「オデュッセイア」とつながる。
ある登場人物、彼は自分の妻に求婚する者がいても放っておいた。彼らが真剣に言い寄ってくるとは思わず、追い払わなかった。妻を信じ、男への親切を許した。しかし、その結末は...。

「私の愛する女が浮気をしたとする。私は女を殺す。しかし何が残るか?女が死に、私は愛を失っただけだ。相手の男を殺せば、私は彼女に憎まれて愛を失う。殺人は何も解決しはしない」
では、事故で2人ともが亡くなった場合は?
いずれにしても、残されたものは喪失感を味わう。


カミーユは自分の気持ちをポールに理解してほしくて、軽蔑する理由をあえて口にしない。そして見せつけるように、他の男性とキスをしたりする。本当にポールのことがどうでも良ければ、そんなことはわざわざしないのだ。

そのカミーユの宙ぶらりんな想い。
彼女はポール以上に失望感を抱いたはずだ。

本当に愛されていなかったのは、カミーユの方かもしれない。


「なぜ愛してくれない?」
「それが人生よ」
「じゃあ、軽蔑する理由は?」
「それだけは、死んでも言えないわ」
ろ