ひろぽん

サウスポーのひろぽんのレビュー・感想・評価

サウスポー(2015年製作の映画)
4.8
かつて無敗の絶対王者として君臨しながらも、愛する妻や名声など全てを失ったボクシングの元世界チャンピオンのビリー・ホープが人生の再起を賭けて苦闘する姿を描いた物語。


Eminemの半生にインスパイアされた作品であり、元々はEminemが主演予定だったが降板してジェイク・ギレンホールに変更となった。

Eminemの半生をボクシングを通して描いているため、人生の栄光からの転落、ドン底からの再起といった王道のストーリー構成になっている。
Eminemの『Kings Never Die ft Gwen Stefani』と『Phenomenal』の2曲が提供されているがどちらも格好良くて痺れる。


施設育ちの短気なボクサーであるビリー・ホープは、受けたダメージの怒りをエネルギーに変え戦う、クレイジーなファイトスタイルで成り上がった無敗の王者。過激なスタイルでチャンピオンにまで上り詰めたが、その過激な気性の荒さにより不慮の事故で愛する妻を失ってしまう。彼は絶望し、堕ちていき、愛する娘まで取り上げられてしまう。富も名声も愛も、全てを失った男が再びリングに返り咲くべく、再起を図る。

ビリーと妻のモーリーンは施設育ちで幼少期から共に過ごし深い絆で結ばれており、その長年連れ添った愛妻をある日突然失ってしまうのだから暴走して悲しみにくれる感情も分かる気がする。施設育ちだと感情の起伏が激しく制御が難しい部分があるから、ビリーの気性の荒さも納得できる。

富も名声も手に入れた栄光から、モーリーンの死をきっかけに一気に堕ちていくビリーの姿はとても見ていられないくらい酷い。そこから全てを受け入れ初心に戻り、前向きにボクシングに打ち込んでいく健気な姿は感慨深い気持ちになる。再起をはかるために立ち上がる男の強い意志と、全身全霊でぶつかっていく行動はとても格好良かった。

ファイトスタイルを劇的に変え、以前よりもさらにボクサーとしてスマートな戦いをしていく姿はとても胸が熱くなるものがあった。元々の攻撃を受けすぎる戦い方は、パンチドランカーになりボクサーとして短命になりそうだから改善されて良かった。

最大の見所はラストのミゲル戦での本物の試合を観ているかのような白熱した戦い。手に汗を握り息を呑むくらい緊迫する試合は、彼の努力を見ているからこそ胸が熱くなる感動するものがあった。

特筆すべき点はやはりジェイク・ギレンホールの本物のボクサーのような肉体を作り上げた役者魂。バキバキの筋肉が際立つほど身体を絞り、鍛え上げた肉体は本当に素晴らしかった。それに加え、彼の演技力の高さが相まって相乗効果を生んでいる。


再起の物語だから自分が落ち込んでいる時や、追い込まれている時に観るとパワーを貰えて、やる気が出る大好きな作品。何回も観てるけど、毎回這い上がる姿に勇気を貰える。ビリー・ホープという名のように希望はいつどんな時でもあるんだと思う。
ボクシング映画はやっぱり面白い。
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