このレビューはネタバレを含みます
東京オリンピックを翌年に控え、池田内閣のもと高度経済成長真っ只中の昭和38年。広島では明石組を後ろ盾にする打本会と、新和会を味方につけた山守組との抗争は激化していた。打本会側についていた広能は、山守に子分を殺された恨みを晴らさんと息巻くも、兄弟分の岩井の説得により、必死に堪えていた。そんな中、日に日に悪化する暴力団絡みの事件を受け、市民団体を中心に暴力団排除の世論が高まっていた……。
深作欣二監督のヤクザ映画シリーズ第4弾。これまで綴ってきた抗争が過激さを極め、ついに終結を迎えていく過程が描かれている。
印象的なのはラストの裁判所で、寒さに凍えながら待つ広能と武田が「もうワシらの時代じゃない」と呟くシーン。元は山守と打本が中心になって始めた戦争にも関わらず、当の本人達は軽い罪で済んだのに対し、広能や武田、その他大勢の子分達はその尻拭いをする形となった。武田に関しては山守の為に身銭を切ったにも関わらず、得られた物は何一つなく、一文無しでムショ暮らしを強いられるという、広能を苦しめたキレ者の何ともやりきれない結末は見てるいるこちらまでヤキモキしてくる思いにかられる。抗争で最も得をしたのが、最初から最後まで二枚舌で人を利用し続けた山守であり、結局最後はずるい人間が得をするのはヤクザ社会においても同じなのだと考えたら、広能や武田でなくても諦観の境地に達するのは致し方ないのかもしれない。
あれだけ激しかった抗争が世論の高まりと警察の本格的な介入によって、あっさり終わってしまうのは、物足りなくも感じるが、現実味のある結末とも言える。
