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プランマン 恋のアラームが止まらない!のmaverickのレビュー・感想・評価

4.0
2014年の韓国映画。
『シルミド』『殺人の告白』のチョン・ジェヨンと、『王の涙ーイ・サンの決断ー』『虐待の証明』のハン・ジミンによるロマンチックコメディ。


これもジャケ絵で損してる作品。意外と良作で驚く。演技派であるチョン・ジェヨン主演ということで興味が沸いたが、普段ならスルーするタイプの作品。前半のドタバタ具合が観るに堪えなくてハズレ作品だと思ったのだが、途中からどんどん面白くなる。そしてまさかの号泣。最後はほっこりするし、とっても良い話。
韓国はドラマ寄りの映画の場合にこういうポスターを使う。観る層に合わせて分けて作っているのだろう。でも日本版は変えた方がいい。これだとライトな映画好きにすらスルーされると思う。作品自体も感動出来る良い話だし、もっと映画好きにアピール出来るようなジャケ絵にした方が絶対良いしもったいない。

チョン・ジェヨンが演じる主人公ジョンソクは、大の潔癖症で何でも計画通りに進めないと気が済まない完璧主義者。その几帳面すぎる性格で職場の同僚からも変人扱いされて煙たがられている。そんな彼が恋をする。相手はコンビニで働く清楚な女性ジウォン。彼女はジョンソクと同じく綺麗好きで几帳面。自分と同じものを直感で感じたジョンソクは彼女にアタックしようと計画を練る。カウンセラーにまで相談し、意を決して想いを伝えようとするものの大失敗。だが、ジョンソクの密かな想いを知ったジウォンの同僚ソジョンが手助けを申し出る。憧れの相手を振り向かすためのジョンソクの特訓が始まる。

チョン・ジェヨンのコミカルな演技によるキャラクターが面白い。潔癖症で完璧主義者の変人ぶりに、「そこまでする!?」と大笑いなのだが、コロナ禍の現状だと共感する部分が多い。あまりにも気にしすぎて息苦しい生き方も含めて考えさせられる。

この主人公とは真逆なキャラクターを演じる、ソジョン役のハン・ジミンがとってもキュート。主人公が憧れる清楚なジウォンとは違い、がさつなソジョン。主人公と同様にほとんどの人が最初はジウォンに好感を抱くと思うが、どんどんソジョンに惹かれていくはず。表情がころころ変わり、いろんな面を持っているソジョン。主人公をぐいぐい引っ張っていく思い切りの良さも気持ちいい。演じるハン・ジミンが演技が上手くて、ぐいぐい物語に引き込まれてゆく。彼女が歌う劇中歌も印象的で、歌詞がユニークで素敵な曲ばかり。歌が上手いから元アイドルなのかなと思ったら普通に女優さんだった。劇中曲4曲はどれも良い曲なので、サントラ欲しいなぁ。

二人とも個性的なキャラクターなのだが、ただインパクトあるキャラで終わらずに人物の掘り下げがしっかりされているのが良かった。そこをフォーカスするから話も引き締まる。ジョンソクも何故ああなのか納得がいく。ソジョンも表向きはただがさつな女に見えて、内側は傷心を抱えて健気に頑張っている。二人がそれぞれに自分のトラウマを乗り越える話であり、そこが胸を打つ。「変わるって大変。簡単に出来たら変人よ」という劇中での言葉が響く。徐々に変化してゆき、より生き生きとしてくる二人の姿が微笑ましかった。

ジョンソクが惚れる清楚なジウォンを演じるのは、ドラマ『華麗なる誘惑』『優雅な母娘』のチャ・イェリョン。この方、こんなに美人なのに映画ではこれといった成功がないんだとか。この役ぴったりだったけどヒロインはソジョンの方だったし、確かに影は薄かったかも。容姿がよくても韓国で売れるには大変。才能ある人がひしめき合う世界だからね。

主演二人を繋ぐ多くの登場人物たちが個性的で楽しませてくれる。『トガニ 幼き瞳の告発』のチャン・グァンも印象的な役で登場。またしても憎たらしい役である。それぞれの人物もしっかり掘り下げがされている。ジャンルはロマンチックコメディだが、人間ドラマとして落ち着いて観れた。


テレビ局の問題点を描いていたり、日本と通じる部分で共感も大きかった。トラウマが人に与える影響って計り知れない。それがその人のその後の人生を大きく変える。笑って楽しく観れる映画と同時に、考えさせられる真面目な話でもあって見応えあった。これも隠れた良作だ。韓国映画はハズレが少ないね。
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